榾火はとっぷりと 2015-04-29 12:36:59 | 文学 松三はこう言いながら、自分の美しかった若い妻が、菊枝の母親が、いかに惨めな半生を送ったかを、農村の女達がいかに虐げられるかを思った。 太陽はだいぶ西に傾いて、淡い陽脚を斜めに投げだしていた。緑の新芽は思い思いの希望を抱き、榾火はとっぷりと白い灰の中に埋もれていた。 ――佐佐木俊郎「緑の芽」