★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

「群竜伝」の民主主義

2016-05-23 23:18:01 | 漫画など


野球が始まったら意外と普通の野球漫画になった「群竜伝 2」。前半で、野球部がやさぐれていた理由が、かつて、ミスした一年生を応援団がリンチして死亡させた事件にあることが明かされるが、とりあえずどぐされ野球部であることには変わりがなく、気合いやらルール違反すれすれの脅しなどで予選を勝ち上がる。

つまり、あれである。一人一人が親分のような人間しかいない集団が暴力ではなしに合法的に勝ち上がるためには、「野球」というゲームが必要だったのである。これは民主主義のようなものではなかろうか。

……僕は政治的民本主義が実施さるるに先って道徳的といわんか社会的といわんか、とにかく政治の根本義たる所にデモクラシーが行われて始めて政治にその実が挙げられるものと思う。モット平たく言えば民本思想あって始めて民本政治が現われる。して民本思想とは前に述べた平民道で、社会に生存する御互が貧富や教育の有無や、家柄やその他何によらず人格以外の差別によって相互間に区別を付けて一方には侮り、一方は怒り、一方は威張り一方はヒガみ、一方は我儘勝手の振舞あれば一方は卑屈に縮むようでは政治の上にデモクラシーを主張してもこれ単に主張に終りて実益が甚だ少なかろう、トいって僕は然らば政治は圧制を旨としても思想的のデモクラシーを主張すれば足れりとは信じない。

――新渡戸稲造「平民道」


……新渡戸の言っていることはたぶん半分間違っている。