★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

朝顔成長日記1

2016-05-31 14:16:26 | 日記


「……熱いわ――この乳も酔っている……」
 と、いって寂しく微笑んだ。
「人目があります。これでは巡礼して、肌を曝しては、あるかれませんね。ぽっちり薄紅を引きましょうか、……まあ、それだと、乳首に見えようも知れません。」
 浅葱の絵の具を取って、線を入れた。白雪の乳房に青い静脈は畝らないで、うすく輪取って、双の大輪の朝顔が、面影を、ぱっと咲いた。
 蔓を引いて、葉を添えた。
「うまいなあ、大野木夫人。」
「知らない。――このくらいな絵は学校で習います。同行二人――あとは、あなた書いて下さいな。」
「御意のままです、畏まった。」

――泉鏡花「白花の朝顔」