★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

出発ピンコー

2016-05-04 16:08:42 | 大学


新聞を読むと頭が腐るとか学生に吹聴している割には、新聞記事の切り抜きと保存を二〇年もやっているわたくしである。「恋のSL、出発ピンコー」(『朝日新聞』5月2日)は、授業で使えると思って切り抜いて裏紙に貼りつけた。授業というのは、こういう一見無駄なものからも展開されるものであって、クォーター制なんかにしたら確実に、授業のレベルが下がるだけでなく、面白さ(つまり問題への探求の深度)が失われる。教養を情報だと思っている輩はウィキペディアでも読んで知ったかぶりでもしていなさい。そんな奴が世界的に通用するわけないでしょうが……



「毎週かあさん3」。「ダーリンは70歳」が「毎日かあさん」より「毎週かあさん」に近いノリなので、ちょっと普通に見えた3である。


トットちゃんとスパイ

2016-05-04 00:58:04 | 文学


読んでない本が大量にあって、時々めまいがしてくる私であるが、「窓ぎわのトットちゃん」もそのうちの一冊であったので、読んだ。

黒柳徹子はリトミックを日本に広めた小林宗作のトモエ学園の出身で、そこにいた頃のことを書いた本である。

よかったのは最初の「はじめての歌」と「スパイ」の章である。トットちゃんはスパイになりたかった。最初の学校を退学になったあたりでもうスパイ志望で、トモエに入ってからもそれを忘れてはおらず、小二の時、初恋の泰ちゃん(のちの物理学者、山内泰二)に理詰めで不可能性を説かれるまであきらめてはいなかったようなのだ。

黒柳徹子の何ともいえぬ切れ味は、どうも昔スパイ志望だったことと関係があるのではなかろうか。

それにしても、彼女はなぜスパイ志望だったのか。彼女が生まれてから小学校2年生あたりがゾルゲがスパイをやっていた期間にあたっている(たぶん)。ドイツから逃げてきたローゼンシュトックが指揮するN響のコンサートマスターの娘であるトットちゃんは、まあ、ちゃんと何が問題なのかわかっていたのであろう。

で、彼女にスパイをあきらめさせた山内君は、スパイの同時代的な危険性までちゃんとわかっていたのではなかろうか。トットちゃんより山内君の方が惚れていたのかもしれない。

「ありがとう。スパイはやめる。でも、泰ちゃんは、きっと偉い人になるわ」

この台詞はよかった。素晴らしいラブシーンであった。