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武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり
十二段の昔男は、武蔵野で人の娘を盗んで逃げていた。娘を草の中に置いて逃げたら、追っ手が草むらに盗人がいると思って火をつけようとした。そのときに、娘が詠んだのが上の歌。「つまもこもれり我もこもれり」というのが、とても愉快な歌である。昔男とともに捕まりたかったのか、歌としてはとっさに巧みにつくってしまったのか……
中上健次なら、武蔵野の野っ原で焼け死ぬ恋人達を描いてくれそうである。太宰治なら……草じゃなく……。安部公房なら、草むらのなかで穴を掘ってもぐらに変身。
そういえば、夫婦で引きこもりになってしまう例とかはあるのであろうか。「つまもこもれり我もこもれり」……えらいこっちゃ