
秋模様。彼はキリギリスではない。
「ブルジョアって、わるいものなの?」
「わるいやつだ、と僕は思う。わびしさも、苦悩も、感謝も、みんな趣味だ。ひとりよがりだ。プライドだけで生きている。」
「ひとの噂だけを気にしていて、」Kは、すらと湯槽から出て、さっさとからだを拭きながら、「そこに自分の肉体が在ると思っているのね。」
「富めるものの天国に入るは、――」そう冗談に言いかけて、ぴしと鞭打たれた。「人なみの仕合せは、むずかしいらしいよ。」
――太宰治「秋風記」
世界の歴史を妙に半端な形で世界中で学ぶようになってから、そこそこほとんどの国が嘘つき野郎であることが判明し、いくら健忘症の国民でもそこそこ悪行をおぼえているようになった。で、なにかやらかすと「おまえオオカミ少年の話をしらんのか」をお互いに言い合ってるうちにオオカミが来て、そのときだけ「赤ずきんをたべたオオカミの気持ちも考えろ」とか言い合うみたいな事態になる。笑いが止まらない――が、じぶんも狼少年だから仕方がない。しまいにゃ酷暑である。