メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

世界少女名作全集 23 オルコット物語 コーネリア・メグス/著 岩崎書店

2024-01-14 17:32:12 | 
1973年初版 1986年 第12刷 白木茂・吉田比砂子/訳 山中冬児/装幀・口絵 野々口重/挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


あー面白かった!
オルコットが書いた物語と同様
オルコット自身の人生も素晴らしい
それを書いた女性作家のほかの小説も気になった

これほど情熱的に生ききるヒトは稀だ
家族や他人のために奉仕した人生は、マザーなどの偉人と並ぶもの

転生したら、また誰かのために働き、存分に書いているだろうか
それとも、今度こそは、お金に振り回されず
自分自身の幸せのために自由に生きるだろうか

全集のオルコット作品はあと数冊
夢中で読んで、もうなくなってしまうのは淋しくてならない

家計を助けるためにいろいろ書いたようだが
翻訳されていない作品がまだまだたくさんあるのではないか




【内容抜粋メモ】

登場人物

オルコット家
父 ブロンソン 
母 アバ
アンナ 長女
ルイザ 次女
エリザベス 三女
メイ 末子

アバの兄 サムエル・メイ
哲学者で詩人のラルフ・ワルドー・エマーソン



●ルイザの誕生
アメリカ、ペンシルベニア州でルイザが生まれる

父ブロンソンは、コネチカット州の貧しい農家の生まれ
のちにチェシャーの学校の先生になり、アバ・メイと結婚

ペンシルベニア州の田舎に小さな学校をつくり
まだ一般教養が行き届いていないアメリカに、新しい教育法を広めていた

しばらくして、学校のやりくりが困難になり
ボストンのマソニック寺院に新しい学校をつくるため蒸気船に乗る



●デラウェー河
アンナとルイザは船中の人気者
好奇心旺盛なルイザは1人で機関室に行き、機械が動く様子に夢中になる





子どもの心をなにより大切にするブロンソンは
大人のしつけで子どもの夢を壊すことはしなかった



●ボストン広場のかえる池事件
ブロンソンはマソニック寺院の中にテンプルスクールを開き、アンナも通う
アバは音楽のクラスを受け持つ

ルイザはまた1人で出かけて、迷い子の号外屋に自分がその子だと教える







かえる池に落ちて、黒人少年がずぶぬれになって命を助けてくれて
ルイザはこの少年を一生忘れなかった








●リーガンおばさまの家で
ルイザは2~7歳までテンプルスクールに通った

ブロンソンは黒人の子どもにも、白人と同じ教育を与えようとして理解されず
ニューハンプシャー州のコンコードに引っ越す

世界でも有名な哲学者で詩人のラルフ・ワルドー・エマーソンと知り合う

リーガン家に招待されたルイザは、近所の貧しい子と遊び
かれらがいつも空腹でいるため、食料品室から何度も食べ物を出して与える







リーガンおばさまに泥棒と同じだと叱られて
「あの時悪かったのは、黙って持ち出したことだけだった」と反省する



●父の帰国
アンナ11歳、ルイザ10歳の時、ブロンソンは理解者を求めてイギリスへ渡る
帰宅すると、身寄りのない3人の少年を連れて帰る
オルコット家のどん底生活が始まる







アバ:
神さまは、人々ができる限り、自分で自分のことをやってのけるように願っている
神さまに何もかも押し付けてはいけないの


一家は、マサチューセッツ州の農園に引っ越し“フルーツランド”と名付ける
アンナとルイザは本格的な日記をつけはじめる

人々の間に奴隷制度反対の声が広まる
ある日、かまどの中に南部の綿畑から自由を求めて逃げてきた奴隷が隠れていることを知って驚く

ブロンソンの仕事は難しくなり、失望で重い病気になる
アバの兄サムエル・メイが助けてくれて、一家は、スチル河へ引っ越す

一家は、ルイザが生まれて28年間に29回の引っ越しをした!



●納屋劇場
コンコードに引っ越し、“ヒルサイド”と呼ぶ
納屋を劇場に見立てて、ルイザが脚本を書き、家族が演じた演劇は好評

体が弱いベス、芸術肌のメイのためにも
もっとお金を稼ぎたいと思う13歳のルイザ



●あこがれの人
ミスター・エマーソンは、ブロンソンの相談役、協力者
14歳のルイザは彼の書斎で自由に本を読むことを許された







ルイザとアンナは、同じ年ごろの友だちが欲しいと父に訴えて学校に通いはじめる
2年通って、ふたたび家庭に戻る



●うそつき紳士
納屋はオルコット学校となり、ルイザが教えはじめるが、月謝はわずか
アバはボストンで仕事を持ち、アンナは学校の先生となる

牧師が妹の相手役に1人来て欲しいと頼み、ルイザが行くと
実は神経痛を患うエリザの世話ではなく、お手伝いとして家事いっさいを任される
1か月の約束を守って働きぬいて、たった4ドルしかならなかった






●ルイザの髪の救い主
顔見知りの床屋を訪ねて、評判の黒い豊かな髪をかもじ用に売ったら
どれほどもらえるか聞くと、200ドルを言われて驚くが1週間考えることにする







オルコット家は、借金をして、黒パン、水、少しの野菜の食事が何日も続く
ブロンソンの書いた新教育に関する論文が売れて、髪を切らずに済む



●まずしき移住者たち
失業者があふれた年、貧しい人々が行列して歩き
「ほんのしばらく休ませてくれ 水を飲ませてくれ」
と懇願する様子に同情し、家に招く







流浪の人たちは、悪い病気を持ち、貧しさのあまり、盗みをするという噂もかまわず
自分たちのミルクを分けてあげるオルコット家

アバ:
どうぞ、くじけず、堕落せず、強く生きる意気込みを持ってください
そして、どんな時も愛し合う心を持ってください
それだけが、あなた方を助けるでしょう

ベス:ルイザ姉さんが魔法の杖を持っている



●天然痘
アバが天然痘にかかり、高熱を出しても、医者には金がかかるとムリをする
赤い斑点が出て、一家に伝染り、医者も近所も近寄らなくなる
「分別もなく、あんな乞食どもを相手にするからだ」

唯一、叔父サムエルの妻が食料を台所口に置いてくれる
ある日、それが途絶えて、ルイザは姉妹と替え歌をうたって懇願し
おばはパンやチーズを持ってきてくれる







こうして、いつもルイザのウィット、ユーモア、明るさが家族を助けた
一家は、またハイストリートに引っ越す



●悲しみあれば、歓びあり
その後、ピクニイストリートに引っ越し、アバは家に下宿人を置くが
週に一度の宿代を3週間もためて、飲み歩いている

頼みのブロンソンがようやく帰るも、残ったのは1ドルだけ
エレン・エマーソンにルイザが物語を作った話を友人に話したら
雑誌に載せるから原稿を送ってくれと言われ、早速とりかかる



●たったひとりで
ミスター・グッドマンの雑誌に載った『花物語』は好評で、ルイザは小説家を目指す

一家はウオルポールに引っ越す
ルイザ:私はもう父母の厄介ではいけない と独立を決意してボストンへ行き
いとこのスクール家に泊まる

当時は女性が働くのを卑しむ風習があった
若い女性の仕事で、教師は一番上だが、何もせずぶらぶらしている婦人のほうが
よほど立派という考えがあった




●ベス、死んではだめ
ベスが近所の子にショウコウ熱をもらって瀕死だと手紙が来て、慌てて駆けつけ
命がけの看病をする

ベス:私はもうすぐ死ぬのだからいいの ルイザ姉さんこそ幸せになってちょうだい





ベスのために、二度目のボストン行きを決めるルイザ
リード夫人の屋根裏部屋に泊めてもらい、部屋代の代わりに主人の縫物をする
食べ物もろくにない日々を「失望しない」と叫んで耐え抜く



●暴動
いとこのリジイ・ウェルズが同情して助けてくれる
教師の仕事を見つけ、アリス嬢の勉強をみる

ブロンソンの友人で、奴隷解放派のウィリアム・ギャリスンが暴力団に捕まり
首に縄をかけられ、引きずられていく
ブロンソンがいつの間にか駆け付けて助ける







人々はコントラバンド(逃亡奴隷)を自由の地へ逃がそうと動きだす

奴隷が捕まると、殺されたり、前よりひどい目に遭わされる
バーンズもその1人で、刑務所から救い出し
ブロンソンが警察のピストルの弾よけに最後までがんばった

ルイザ:私も正しいことをしたい



●ウィリアムとエレンの物語
エレンは最愛の夫ウィリアムを恐ろしい農場に送られ
鬼監督の嫁にすると白人の農場主に命令された

ウィリアムはエレンを連れて脱出し
奴隷解放主義の部落に救われる







警察と暴力団は2人を探しまわり
ボストンで有名な奴隷解放主義者セオドル・パーカー氏は
2人を船に乗せて、イギリスに渡るよう手配する

セオドル:これから神の前で自由な人間としての結婚式を挙げるのだ



●ベスの死
アバは嫁入りの時に父から渡されたお金を使って
ベスの看病のため、コンコードの投げ売りの家を買う
一家そうででボロ家を整えて“オーチャードハウス”と名付ける







だが、ベスにとって死ぬことは、苦しい病気からの解放、自由、安心だった
ベスは短い一生を終え、ボロ家と借金の山が残る

アンナはプラット家の農園に手伝いに通っていたが
ある日、ジョン・プラットと婚約したと打ち明ける



●アンナの結婚





ルイザは姉妹を愛しすぎていたため、気が狂いそうになる

ルイザ:
なぜ愛し合う者が別れなくちゃならないのだろう
私はまだ20歳なのに、もう若い心を持てないのだろうか
(この辺は、モンゴメリの『パットの夢』に似ている/驚

アンナの幸福な新妻ぶりを見て、センチメンタルな少女と別れるルイザ
どんなに愛し合う肉親でも、人はそれぞれ別の1人ずつなのだ

日記:
それでも私は自由な独り身でありたい
ルイザ自身のカヌーを、ただひとり漕いでいきたい


メイはサイラキューズでの教師の職について、家を出る

ルイザは自分をモデルに『気むずかし屋』を書き
セオドル・パーカーをモデルに『成功』を書く

ブロンソンはコンコードの学校全体の総監督に任命

厳しいしつけ、おしつけがましい行儀より
子どもに必要なのは、大人の愛だと熱心に説いた


子どもたちはブロンソンに『巡礼ものがたり(天路歴程)』をプレゼントする



南北戦争
北部はリンカーン、南部はジェファーソン・デービスを大統領にして
ついに1861年戦争が始まる

“人民の、人民による、人民のための政治”

ルイザは迷った末、看護婦を志願して病院に行く


●看護婦ルイザ
看護婦室にはアブラムシやネズミがたくさんいて
病院は不潔でイヤな臭いが充満している

正規看護婦ではないのに、人手不足で病室の監督を任される
大勢の傷病兵がなだれこみ、見よう見まねで世話をはじめる





夜も眠れず、疲れがたまり、頭痛と戦いながらも
明るさを忘れず、病室は笑いがたえない

仕事に慣れると夜勤に回される


●ビリイとキット
夜中、12歳の少年鼓手ビリイの泣き声が響く







南北戦争が始まって1年後、政府は人員不足で少年志願兵を集めた
ビリイは、太鼓をたたきながら軍隊と行進するのを光栄に思い
どんなにツライ時もキットが助けてくれた

ビリイはひどい熱病にかかり、北軍が退却する足音を聞く
キットは怪我をした体でビリイを背負って歩き続ける

目が覚めたら、野戦病院の入り口にいて、キットは死んだと聞かされた
ルイザ:悲しい時、きっとルイザ姉さんを呼んで、なんでも話しなさいね



●はじめて見たリンカーン
ルイザはわずかのヒマに手紙を書き、日記をつけ
ほかの兵士のために頼りを書いてあげた

自由時間の半分は睡眠、半分はワシントン見学にさいた
初めて見たリンカーンは、立派な容姿ではなかったが
苦しむ人、虐げられた人の味方だった







●喜びと、悲しみと
昼間勤務に戻り、一番手をやいたのは
物資配給係のミスター・ホワイト

物資を持っていることを自分の権利に思い違い
クスリをヤミに流して金儲けし、酒で酔っぱらっている

ある日、地下室で悪い仲間と酒を飲んでいて
クスリを出さないのなら新聞に訴えると言うルイザ

鍛冶屋だったジョン・スーリイは立派な体に恐ろしい傷を負いながら
周りの兵士、ルイザを気遣う

スーリイ:
私の心は少しも苦しまなかった、と最後の言葉を母と妹、弟に書いてください
みんなの幸せを祈っていると

1863年 リンカーンの奴隷解放声明にわきたつ中
ルイザはチブスに肺炎を患って寝ていた

「ばんざい おめでとう!」

幼い日、かえる池で助けてくれた黒人少年
かまどの中の黒い顔が思い出される

外科医ミスター・ウルフは、夜昼なしに働いているにもかかわらず
看護婦室の暖炉の火をおこしてくれる
ウルフ:君は家に帰らなくてはいけないよ

3か月の志願をしたのに、1か月で止めるわけにはいかないと言い張るルイザ
ブロンソンが迎えに来て、痩せ細った娘を自宅に連れて帰る



●病院スケッチ
ようやく起きれるようになったのは春
アンナには男児が生まれ、フレデリック・オルコット・プラットと名付けられる

ブロンソンがルイザの手紙に感動し、コモンウエルズ社に送り、新聞に載る
病院の様子を知りたかった市民の間で大反響となり
続けて書いて欲しいと新聞社から頼まれる

ルイザは、チブスで死んだ看護婦長、ビリイらについて書く
ほかの社からも注文が相次ぐ



●終戦とリンカーンの死
北軍は南部の首都リッチモンドを陥落し、長引いた南北戦争が終結

オルコット家に休憩しに来た兵士たちも『病院スケッチ』を読んでおり
軍列は鉄砲を高く掲げて「われらの天使、ミス・オルコットのために」と叫ぶ

リンカーンは、1865年、劇場で南部派の俳優ブースに暗殺される
(これもケネディ暗殺事件同様、どこか引っかかるよね

昔書いた古い小説に手を加えて『気むずかし屋』『気まぐれ屋』を出版



●ヨーロッパ旅行
知人でお金持ちの娘メリイが病弱なため
付き添いが必要と言われてルイザが行く

ロンドンでは『クリスマス・キャロル』の作者ディケンズがいる街に興奮するルイザだが
趣味が真逆のメリイは無関心

フランクフルトではゲーテの家を見て、スイスのエベイにしばらく滞在



●18歳のラディスラス
ポーランド人で革命軍にいたラディスラス・ウズニースキイは
胸を患っていて、30歳過ぎのルイザを姉のように慕う
ラディスラスがフランス語、ルイザが英語を教え合い、詩や文学の話で盛り上がる





メリイは気の合う友人を見つけたため、ルイザは1人でパリに行くと
ラディスラスが会いに来てくれて
『虚栄の市』をポーランド語に翻訳しているのを手伝う



●パリ-ロンドン
アメリカの女流作家ミス・オルコットとして、人々は歓迎し、新しい小説の注文も入る
限られた旅費のため、家に戻ると、アバがさらに衰えていて驚く

ロバート・ブラザース社の支配人トーマス・ナイルズ氏が来て
「なんでもいいから書いて送ってくれ」と頼む
トーマス:あなたは少女向きのものが書けると思う

母が回復、メイはまた学校に行きたがり、ルイザはとにかくお金が欲しいと思う



「若草物語」の誕生
1868年 以前、家族について書きたいと思っていたことを思い出し
ルイザが13歳の頃から書き出す
お涙頂戴の話は、若い心をしぼませると気づく

ナイルズ氏は、出版に迷い、姪リリイや知人の娘たちに読ませると大好評

「若草物語」が出版されると、飛ぶように売れ
感激の手紙が山のように届き、収入もぐんと増えた



●ルイザの死
「流行おくれの少女」(『美しいポリー』『風の中のポリー』)も評判
ルイザはメイと2度目のヨーロッパ旅行に行き
そこで出会ったロンドンの青年と結婚したメイ

アンナの夫ジョンが急死

「第二若草物語」(『愛の四少女』)出版

ベスの死が思い出されるオーチャード・ハウスを出て
両親のためにアンナ母子の近くに一軒家を買う

『ライラックの木かげ』を書いている時に母が死去
メイがルイザ・メイ・ニーリッカ出産

ミスター・エマーソンが家に来た時、メイの死を知る(驚
「赤ん坊をくれぐれも頼む」と言い残した

メイの赤ん坊ルルはルイザに生き写しの少女で
ルイザはルイスバーグに家と乳母を用意し、たくさんお話を書いた

1882年 ラルフ・エマーソン死去

『ジョーと少年たち』を書いて、体が衰えたルイザは思うように仕事ができず
仕上げに長くかかる

2年後、ブロンソンを訪ねて命とりの風邪にかかり、3月6日永眠した
ブロンソンはその少し前に死去していた

マサチューセッツ州コンコードの「スリーピー・ホロー」という大きな墓地に
「作家の峯」と名付けられ、ルイザ、エマーソンらが眠っている









解説

コーネリア・メグ
アメリカの女流作家 児童文学者
1884年 ロックアイランド生まれ
学校の教師時代に童話を書いた

1933年 オルコットが生まれて100年を記念した百年祭が行われ
オルコットの著作目録と参考書目を作るにあたり序文を書いて欲しいと頼まれる

エドナ・チェネィが書いた『ルイザ・メイ・オルコット その生涯と書簡集』の愛読者で
再読すると、足りない部分がたくさんあると気づいた
書簡集が出たのは、オルコットが死去した翌年で40年も経っている

序文よりオルコットの新しい伝記が書きたいと思っているところに
編集長から伝記の依頼が来た

オルコットの生きていた時代の知人を何人も訪ね
メグとして登場するアンナの義理の娘プラット夫人からも話を聞いて本書を書いた

コーネリアはこれまで二十数冊の本を出している

児童文学研究に必須の「児童文学の歴史と批評」を共著で出版
これは、ハーベイ・ダートン著『イギリスの児童文学』とともに
児童文学研究者にとって無二の宝典といっても過言ではない


コメント