メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

アーデン城の宝物 E.ネズビット/著 東京創元社

2024-07-07 13:58:05 | 
2014年初版 井辻朱美・永島憲江/訳 ハロルド・R.ミラー/挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


これまでのネズビット作品同様、お城を舞台として、子どもの姉弟が主人公
フシギな小動物が魔法をかけてくれる物語

古いドレスを着ると、その時代にタイムトリップする映画を昔観たことを思い出した
『過去へ旅した女』(1979)

いっしょに借りたもう1冊はいとこのディックが主人公で
今回の登場人物とクロスする構成なのが興味深い

まだまだあるネズビット作品を和訳して欲しいな


【内容抜粋メモ】

登場人物
アーデン家
エルフリダ 姉
エドレッド 弟
イーディスおばさん 叔母
ジムおじさん
ジェームズ・アーデン卿

モルディワープ 白いモグラ
ビールじいさん
ミセス・ハニーセット 世話係
ベティ・ラヴェル 魔女
リチャード 別称ディック いとこ




●第1章 アーデン卿
アーデン家はヘンリー王とも付き合いのある大家だったが
数が減り、勢力も失われ、広大な領地を手放した

残ったのは年老いたアーデン卿とエドレッドだけ
エドレッドは姉エルフリダ、イーディスおばさんといっしょに住んでいた

父とイーディスおばさんの夫ジムおじさんは仕事で南アメリカに行き
山賊の捕虜となり、2年前、死んだしらせが届いた







イーディスおばさんは部屋を下宿屋にして、家族は不便な生活をしていたが
ある日、父のブレイク号が戻った手紙が来て、出かけた

姉弟はアーデン城までピクニックに行き
ビールじいさんから城の鍵を借りる







アーデン卿が2週間前に亡くなり、宝物についての言い伝えを教えてくれる
アーデン卿が10歳になる前夜、アーデン塚に立って呪文を唱えよ
宝物のありかは城の図書室の本にある

エドレッドは自分こそが次のアーデン卿で、もうすぐ10歳になるから
宝物が手に入れば、城を建て直して住めるのではと興奮する

図書室にあった『アーデン家の歴史』から詩のメモが落ちて
アーデン塚に立ち、呪文を唱える








●第2章 モグラのモルディワープ
目の前に家紋と同じ白いモグラが現れる
エドレッドが親切で賢い子になったら宝物のありかを教えると言う

モルディワープを呼び出すには自分で詩を作らなければならない

家族は城に引っ越す
詩をつくってモルディワープを呼び出し
過去に行って宝物を探すのを助けてほしいと頼む
モルディワープはきょうだいが1日ケンカしないのを条件にドアを探すよう教える







きょうだいは3日目にしてやっと条件をクリアし、57のドアを開けるが何もない





エルフリダの思いつきで目隠しをして探すと
箱が並んだ屋根裏部屋を見つける

箱には宝物はなく、いろんな時代の衣装が入っている
その1つを着てみると、その時代にワープする
新聞には100年前の1807年とある



●第3章 ナポレオンの時代
品のいいおばあさんに手紙をジョージ酒場に出してくるよう言われるが
どこに行けばいいのか分からない







コックにそう話すと、魔女のベティ・ラヴェルの呪いを受けたに違いないから
当時は貴重だった砂糖とお茶を持って行くよう言われる

いかにも魔女風なおばあさんに砂糖とお茶を渡すと
2人はもといた時代に戻れるだろうと予言する
彼女にはエルフリダらの時代の様子が見える








●第4章 フランス軍の上陸
フランス軍が攻めてきたとしらせが来る
当時の人びとは、ナポレオンを“夜に出歩く恐怖”と呼んでいた

みんな海のほうへ見に行き、エルフリダは船乗り風の男から声をかけられ
密輸団の洞窟を見せてもらう









とうとうフランス船が現れるが、難破して、みんなで助ける
きょうだいはモルディワープを呼んで屋根裏部屋に帰る








●第5章 追いはぎと・・・
エルフリダはモルディワープに時計の針を戻す方法を聞くと
白いデイジーが時計のようになり、針の上に座ると回りはじめる

モルディワープ:白いものはなんでも吾輩の言うことを聞くのだよ








エドレッドが時計を止めている間、エルフリダは時間を旅できるから
イーディスおばさんたちを心配させることもない

エルフリダはすぐに冒険から帰ってきた
アン女王の1702年に行き、いとこのベットらとともに城に帰る








舗装されていない道を馬車で揺られてウンザリしていたところに
ハンサムな紳士が現れ、みんなが宝石などの買い物をした話をすると
その紳士がマントと仮面をつけて、エルフリダを人質にして追いはぎする
(モンティ・パイソンのスケッチ「デニス・ムーア」みたいw







その夜、エルフリダに紳士から手紙が来て
ジェームズ三世が隠密裏に来たことを知らせる
見つかれば殺されてしまう身ゆえ、かくまうことにする



●第6章 秘密の羽目板
ベットは秘密の部屋を教え、エルフリダが食事を運ぶと
食器棚に盗んだ宝石を隠したと教える







大勢の兵士が追って来て、エルフリダを問い詰めるも逆にたしなめられる
紳士:ルナール狐(!)を追いかける猟犬ばりに、ボクを探し回るなんてさ







紳士はエドワード・タルボット准男爵と名乗り
アーデン家の宝石を盗めるかどうか賭けをしていたと明かす

エルフリダがエドレッドに冒険談を話すも信じてくれないため
食器棚の宝石を探そうとして、秘密の部屋に閉じこめられてしまう








●第7章 秘密の部屋の鍵
暗闇の中、食器棚の中を探すが宝石はなかったが、“E.タルボット”と刻まれていた







魔女の小屋を訪ねると、ベティと再会する

ベティ:
あたしのひいばあちゃんが小さかった時
宝物が埋められるのを見たって場所を教えてあげる

場所を聞く前にベティは消えてしまう



●第8章 ガイ・フォークス
エドレッドはカメラを持っていって、荒れ果てる前の城の写真を撮ろうと提案
今度は2人で別邸に行き、エドレッドは仮面劇に連れて行かれ
エルフリダは家で留守番させられる









いとこのリチャードが来て、11月5日だと聞いて、ガイ・フォークスの話をするが
まだ事件が起きる前で、家庭教師が盗み聞きして、国に訴えたため
アーデン一家は大反逆罪でロンドン塔に幽閉される










●第9章 ロンドン塔の囚われ人
エルフリダは常々、冒険したいと願っていて、今まさに冒険しているところで
どう転ぶか分からないのが冒険の醍醐味(現実世界も同じだね

きょうだいは別々にされていたため、モルディワープを呼んで帰ることもできない
エドレッドはウォルター・ローリーと知り合えて感動し
今は囚われの身でも、いずれはアメリカに戻れることを教えてあげる







エルフリダは自分たちが過去で言動したことが、その後に及ぼす影響を懸念する
王妃が一家に同情し、エドレッドは突然城に帰される

リチャードとばあやに協力してもらい、エルフリダをロンドン塔から脱出させる計画を立てる

かつてのニススデール事件の手口で、エルフリダに男の子の衣装を着せて
ばあやが連れてきて、番兵が交代したら、エドレッドとともに塔を出る
ばあやは魔女のベティでビックリ

エドレッドはこの事件以来、勇気、優しさ、賢さを身につけた








●第10章 白い羽根とブローニー式カメラ
エドレッドは自分の時代に戻る前にどうしても家庭教師をとっちめたくなる
リチャードは協力させてくれと頼む
リチャードはエドレッドの時代を見たことがあり、列車も蒸気船も知ってると明かす

屋根に積もった雪をパラドス先生の部屋に落としてやり返し
みんなはモルディワープの言う通り、てっぺんの窓から飛び降りると
白い雪でつくられた馬車に乗り、白鳥が引っ張って走る

離れた場所から城の写真を撮ってから戻る








●第11章 写真の現像
城の写真がちゃんと撮れていて、感動する2人

モルディワープの魔法がかかった羽根のせいなのか
昔の映像が窓から見えて、みんな財宝を隠している

ランチの時間だとハニーセットがノックしたため
肝心の隠し場所を見る前に映像は消えてしまった









2人はまたビールじいさんを訪ねて、荒れ果てた部屋のことを聞く

当時のエルフリダはいとこのディックと恋人同士だったが
船で出たまま戻らず、仕方なくアーノルドと結婚すると決めた
式の当日、ディックが来て、2人はロンドンへ駆け落ちした

その後、連絡もなかったが、ディックが事故死して
エルフリダは赤ん坊とともに自分の部屋に戻った

赤ん坊がさらわれ、エルフリダは衰弱死し、部屋はそのまま荒れた
石鹸作りで財をなしたジャクソンが土地を買って今に至る

エルフリダは映像で見た衣装を着れば、宝物を隠す場面が分かるのでは?と思うが
他の箱はカギがかかったまま



●第12章 フィルムと白い雲
2人はいとこのリチャードのもとへ行けるようモルディワープに頼むと
五月祭で踊っている場所に着く










●第13章 サンザシの花と真珠







エルフリダは花束を妃に渡し、妃がもうすぐ縛り首になることを教える
同じ日にベティも予言したため、妃はダンスの途中で泣きだす

王は妃を泣かせた者を捕えるよう命じたため、ベティはきょうだいに逃げるよう言う
モルディワープの住処である白亜(チョーク)の隙間に逃げ込む








リチャード:
君たちは宝物を探し回ってばかりで
お父さんのことを一度も探ろうとしていない
僕はモルディワープに頼んでアーデン卿を探していた時
1908年に生きていたのを見つけた

エドレッド:お父さんのいる場所へ連れていって



●第14章 宝物を見つける

モルディワープ:
これが仕上げの最後の最後じゃ
屋根裏部屋へ行くチャンスはもうなし

モルディワープはシロクマ、きょうだいは白いネコになって南アメリカに着く
中央広場のひと間に王さまがいて、そばにジムおじさんとお父さんがいた!

リチャード:僕はイギリス人です あなたたちを助けに来ました

父らはこの山あいに黄金があると知って来たが
外に秘密が漏れないよう閉じこめられてしまった

夜に崖下に集まり、みんな城に戻ることができる
イーディスおばさんは城の写真を見つけ、建て直そうと提案

宝物は見つからなかったけれども、父との再会を果たせて満足のきょうだい











解説
本書は今回が初めての翻訳

ネズビットが書いたタイム・トラベルの話は3作
『砂の妖精』の『魔よけ物語』
本書とその続編

ネズビットは『タイム・マシン』を書いたH.G.ウェルズと知り合い
10年後、大量に集めた資料をもとに子ども向けに『魔よけ物語』を書いた

『ナルニア』シリーズを書いたC.S.ルイスは『魔よけ物語』を
お気に入りの作品にあげている

ネズビットは雑誌『新石器』を通じて、アイルランド出身の幻想小説家
ロード・ダンセイニと出会い、家族ぐるみで付き合うようになる

本書では衣服が冒険の重要な役割を果たす

ネズビットは唯美主義風のゆったりしたドレスを着て
髪を短く切り、タバコを公の場で吸っていた









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