
旧道はやがて掛川の新町にさしかかる。
昔はこの辺りに掘り割りがあり、橋を渡るとご門が有ったと言うので、
ここが江戸方の見付けに当たり、これより西方が宿内となる。

ここからが有名な「掛川新町の七曲がり」である。
当時街道が通り抜ける宿場では、容易に敵を侵入させないための様々
な方策が取られていた。宿場の出入り口には、土塁を築き、門を設け、
番所を置く見附と言われる場所や、敢えて道幅を狭くし、更に道をか
ぎの手に幾つも折れ曲げる枡形(曲尺手)など、大群が一気になだれ
込まない工夫で、江戸の治安維持の役割も果たしていた。

新町でそのまま直進すれば、300m程の距離で宿場の中心の連尺で
あるが、ここは忠実に七曲を辿り宿場中心に至りたい。
地図上を目測すれば、左に折れ100m、右に120m、左に50m、右に
150m、右に70m、左に100m、右に80mとなり、七度角を折れた後
最後に左に折れる。

住宅地の中を歩くその距離は、直進する場合と比べると倍以上である。
昔はこの道一筋(もちろん裏長屋などに続く道はあったと思われるが)
だから、旅人は迷うこともなかったであろうが、現在は曲がるポイント
には交差路もある。サインがあるとはいえ、見落として逆方向に進んで
しまえば、歩きには戻ってくるのも大変で、市街地でのこのような道は
気が抜けない。

何度も折れ曲がりながら進むと、終点には木戸と番所があり、そこは
高札場ともなっていて、城下への入り込みを取り締まっていたと言う。
再び県道に戻り暫く行った先が、掛川宿の中心連尺だ。(続)


