片山神社の前右手に、東海道鈴鹿峠を指す道案内板が見えている。
すでに途轍もない急坂である。案内板の後ろにも急な細道が見え、こ
れがどうやら本来の古道らしいが、道を塞ぐように案内板が建つとこ
ろを見ると廃道となっているようだ。
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「八町二十七曲」の始まりは石垣で固められた九十九折りの急坂で、
たちまち息が上がる。所々往時の者と思われる、石畳も敷き詰められ、
既に苔むし古色を見せている。
箱根の東坂や金谷坂は、川の丸石が多用されていて歩き辛かったが、
ここは平らな石が多く比較的歩きやすい。
これなら鈴鹿馬子唄を口ずさみ、馬を引いて歩く事も出来そうだ。
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前方に国道1号線の高架橋が見えてくると、旧道の様子が一変する。
高架を潜る辺りからは、道路の開通で旧道が失われ、付け替えとして作
られた階段道が延々と続き、コンクリート壁に付けられた道も橋の上の
国道まで登っている。
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この辺りは東の難所・箱根の東坂と事情は同じだ。
峠を越える新道が通り、分断された旧道の殆どが階段で連結されている
ので、距離的には短くて良いがこれは結構きつい。
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「ほっしんの 初に越ゆる 鈴鹿山」
江戸時代の俳人・松尾芭蕉はこんな句を残し、記念碑が建っている。
「鈴鹿山 浮き世をよそにふり捨てて いかになりゆく わが身なるらむ」
平安時代の歌人西行法師も、歌を詠んでいる。
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上り詰めて、そこで国道を横切ると、その道路脇に小公園がある。
天然記念物の山桜が植わり、東海自然歩道の案内板も建てられている。
ここは古くから文人墨客が行き交った峠道だ。(続)
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