まこの時間

毎日の生活の中の小さな癒しと、笑いを求めて。

どぶろく

2015-02-10 | 料理

むかし、むかしの話である。わたしが見目麗しい天才少女だったころ。幼い時、人にはそういう時が一瞬あるらしい。

三八豪雪の頃、祖父は「どぶろく」を造っていた。何故か我が家では、それを口外してはならないためか、変な名前がついていた。「とっぴぃしゃけ」と、言って、よく遊びに来ていた従弟と騒いでいたことがある。それは、どんな味なのか、祖父と父がどんな顔をして飲んでいたかは、全く覚えていないが、母が口外してはならないと言い、従弟と私は、昭和の映画でアホな子供たちが、訳もわからず秘密めいたことが面白くて踊っていたように、わたしたちも「トッピィシャケ踊り」を踊っていた。その時それを呑まされていたのか?

しかし、自分で飲む分は造っても良いのだと思う。それを売ってはいけないが。何を隠したかったのだろう。わたしが黙って飲むかもしれないからか。

五郎八という濁り酒を飲んでいて、「田舎造り」とラベルにあるのを見て思い出したのだ。こんな洗練された味ではなかっただろうと思う。色ももっと薄茶がかっていたように思う。発酵した臭いが嫌だった。こんなものを大人は何故秘密にしてまで飲みたいのか分からなかったが、あれからン十年、こんな美味しいものが世の中にあることを幸せに思う。

あの時、一緒に踊っていた従弟は某コンピューター会社の部長になっている。真面目を絵に描いたような彼は覚えているだろうか。女性はエピソード記憶をわりと覚えているらしい。多分彼は忘れているだろう。