20/08/22 06:19
テレワークにおける労務管理ガイドライン改訂をめざす有識者会議
厚生労働省の有識者会議「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」の第1回検討会は2020年8月17日に開催されたが、この有識者会議は新型コロナ感染防止対策として重要な会議と位置付けられる。「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」は厚生労働省の雇用環境・均等局が実施する有識者会議にもかかわらず、総務省、国土交通省、経済産業省の幹部職員も参加していることからも会議の重要性がわかる(政府のテレワーク推進は総務省、厚生労働省、国土交通省、経済産業省の4省が担っている)。
小池都政と安倍政権で共通する感染防止対策の一つが「テレワークの推進」、むしろ「テレワークの徹底」だが、なかなか中小企業ではテレワークへの取り組みが進捗していない。厚生労働省などは中小企業でテレワーク導入が進まない理由として、厚生労働省のテレワークにおける労務管理ガイドラインにテレワーク長時間労働抑制策の一つとして「休日・深夜労働は原則禁止することが有効」と記載されていることだと考えているようだ。
日本経済新聞(電子版)が「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」の第1回検討会について報じていたが、その報道によると「有識者会議を通じ、企業の労務管理などに関するガイドラインの改定を検討する。現在は『休日・深夜労働は原則禁止することが有効』と記し、中小企業などが柔軟な働き方の導入に足踏みする要因になっている。厚労省は適切な労務管理を前提に休日・深夜労働も明確に認めるルールの整備をめざす」とのこと。
テレワークは通勤時間が不要になるメリットと同時にテレワークは長時間労働になる懸念がある。そして、テレワークで働く人の健康管理がテレワークを推進する中で大切だと思うが、たとえ中小企業に限るとしても「休日・深夜労働も明確に認めるルールの整備」には健康被害者を続出させないだろうか。
確かに厚生労働省のテレワークにおける労務管理ガイドラインの改訂は必要な部分もあるが、日本経済新聞の報道に記載されているような改訂には健康管理の観点からは賛同しかねる。いずれにしても検討会は月1回のペースで開催され、年内に報告書をまとめる方針だから、検討会での議論は注視すべき。
参考1・これからのテレワークでの働き方に関する検討会開催要綱抜粋
1.目的
今回の新型コロナウイルス感染症対策として、これまでにない規模でテレワークが実施されることとなった。今回の経験からは、働き方の観点から、テレワークの際の労働時間管理の在り方や社内コミュニケーションの不足への対応など、様々な検討課題も見えてきているところである。
このため、労働者が安心して働くことのできる形で良質なテレワークを進めていくことができるよう、適切な労務管理を含め、必要な環境整備に向けた検討を進めるため、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」を開催する。
2.検討項目
(1)テレワークを行う上での課題について
(2)当該課題に対する対応方針の検討について(以下略)
参考2・テレワーク促進、厚労省が有識者会議 2万社を調査(日本経済新聞)全文
厚労省は有識者を交えた会議で改めてテレワークの普及・定着の方策を練る。アンケート調査では導入企業からは対象職種や労働時間制度、時間外労働の管理方法などを聞き取る。導入していない企業には理由を問う。従業員にもテレワークの課題や所定時間外の労働実態などを答えてもらう。
有識者会議を通じ、企業の労務管理などに関するガイドラインの改定を検討する。現在は「休日・深夜労働は原則禁止することが有効」と記し、中小企業などが柔軟な働き方の導入に足踏みする要因になっている。厚労省は適切な労務管理を前提に休日・深夜労働も明確に認めるルールの整備をめざす。」(日本経済新聞電子版、2020年8月17日配信)
参考3・テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(現行版)抜粋
*厚生労働省のテレワークにおける労務管理ガイドラインから「3 長時間労働対策について」と「4 労働安全衛生法の適用及び留意点」の箇所のみ抜粋。
3 長時間労働対策について
テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される 一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。
テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法としては、以下のような手法が考えられます。
(1)メール送付の抑制
テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外、休日又は深夜に業務に係る指示や報告がメール送付されることが挙げられます。
そのため、役職者等から時間外、休日又は深夜におけるメールを送付することの自粛を命ずること等が有効です。
(2)システムへのアクセス制限
テレワークを行う際に、企業等の社内システムに外部のパソコン等からアクセスする 形態をとる場合が多いですが、深夜・休日はアクセスできないよう設定することで長時間労働を防ぐことが有効です。
(3)テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等
業務の効率化やワークライフバランスの実現の観点からテレワークの制度を導入する場合、その趣旨を踏まえ、時間外・休日・深夜労働を原則禁止とすることも有効です。この場合、テレワークを行う労働者に、テレワークの趣旨を十分理解させるとともに、テレワークを行う労働者に対する時間外・休日・深夜労働の原則禁止や使用者等による許可制とすること等を、就業規則等に明記しておくことや、時間外・休日労働に関する三六協定の締結の仕方を工夫することが有効です。
(4)長時間労働等を行う労働者への注意喚起
テレワークにより長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・深夜労働が生じた労働者に対して、注意喚起を行うことが有効です。
具体的には、管理者が労働時間の記録を踏まえて行う方法や、労務管理のシステムを活用して対象者に自動で警告を表示するような方法があります。
4 労働安全衛生法の適用及び留意点
4-1 安全衛生関係法令の適用
労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を 講じる必要があります。
具体的には、
・必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条から第66条の7まで)
・長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置(同法第66条の8及び第66条の9)及び面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則<昭和47年労働省令第32号>第52条の2)
・ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条の10)
等の実施により、テレワークを行う労働者の健康確保を図ることが重要です。
また、事業者は、事業場におけるメンタルヘルス対策に関する計画である「こころの健康づくり計画」を策定することとしており(労働者の心の健康の保持増進のための指針<平成18年公示第3号>)、当該計画において、テレワークを 行う労働者に対するメンタルヘルス対策についても衛生委員会等で調査審議の上記載し、これに基づき取り組むことが望ましいです。
加えて、労働者を雇い入れたとき又は労働者の作業 内容を変更したときは、必要な安全衛生教育を行う等関係法令を遵守する必要があります(労働安全衛生法第59条第1項及び第2項)。(厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」抜粋)
厚生労働省の有識者会議「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」の第1回検討会は2020年8月17日に開催されたが、この有識者会議は新型コロナ感染防止対策として重要な会議と位置付けられる。「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」は厚生労働省の雇用環境・均等局が実施する有識者会議にもかかわらず、総務省、国土交通省、経済産業省の幹部職員も参加していることからも会議の重要性がわかる(政府のテレワーク推進は総務省、厚生労働省、国土交通省、経済産業省の4省が担っている)。
小池都政と安倍政権で共通する感染防止対策の一つが「テレワークの推進」、むしろ「テレワークの徹底」だが、なかなか中小企業ではテレワークへの取り組みが進捗していない。厚生労働省などは中小企業でテレワーク導入が進まない理由として、厚生労働省のテレワークにおける労務管理ガイドラインにテレワーク長時間労働抑制策の一つとして「休日・深夜労働は原則禁止することが有効」と記載されていることだと考えているようだ。
日本経済新聞(電子版)が「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」の第1回検討会について報じていたが、その報道によると「有識者会議を通じ、企業の労務管理などに関するガイドラインの改定を検討する。現在は『休日・深夜労働は原則禁止することが有効』と記し、中小企業などが柔軟な働き方の導入に足踏みする要因になっている。厚労省は適切な労務管理を前提に休日・深夜労働も明確に認めるルールの整備をめざす」とのこと。
テレワークは通勤時間が不要になるメリットと同時にテレワークは長時間労働になる懸念がある。そして、テレワークで働く人の健康管理がテレワークを推進する中で大切だと思うが、たとえ中小企業に限るとしても「休日・深夜労働も明確に認めるルールの整備」には健康被害者を続出させないだろうか。
確かに厚生労働省のテレワークにおける労務管理ガイドラインの改訂は必要な部分もあるが、日本経済新聞の報道に記載されているような改訂には健康管理の観点からは賛同しかねる。いずれにしても検討会は月1回のペースで開催され、年内に報告書をまとめる方針だから、検討会での議論は注視すべき。
参考1・これからのテレワークでの働き方に関する検討会開催要綱抜粋
1.目的
今回の新型コロナウイルス感染症対策として、これまでにない規模でテレワークが実施されることとなった。今回の経験からは、働き方の観点から、テレワークの際の労働時間管理の在り方や社内コミュニケーションの不足への対応など、様々な検討課題も見えてきているところである。
このため、労働者が安心して働くことのできる形で良質なテレワークを進めていくことができるよう、適切な労務管理を含め、必要な環境整備に向けた検討を進めるため、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」を開催する。
2.検討項目
(1)テレワークを行う上での課題について
(2)当該課題に対する対応方針の検討について(以下略)
参考2・テレワーク促進、厚労省が有識者会議 2万社を調査(日本経済新聞)全文
厚労省は有識者を交えた会議で改めてテレワークの普及・定着の方策を練る。アンケート調査では導入企業からは対象職種や労働時間制度、時間外労働の管理方法などを聞き取る。導入していない企業には理由を問う。従業員にもテレワークの課題や所定時間外の労働実態などを答えてもらう。
有識者会議を通じ、企業の労務管理などに関するガイドラインの改定を検討する。現在は「休日・深夜労働は原則禁止することが有効」と記し、中小企業などが柔軟な働き方の導入に足踏みする要因になっている。厚労省は適切な労務管理を前提に休日・深夜労働も明確に認めるルールの整備をめざす。」(日本経済新聞電子版、2020年8月17日配信)
参考3・テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(現行版)抜粋
*厚生労働省のテレワークにおける労務管理ガイドラインから「3 長時間労働対策について」と「4 労働安全衛生法の適用及び留意点」の箇所のみ抜粋。
3 長時間労働対策について
テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される 一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。
テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法としては、以下のような手法が考えられます。
(1)メール送付の抑制
テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外、休日又は深夜に業務に係る指示や報告がメール送付されることが挙げられます。
そのため、役職者等から時間外、休日又は深夜におけるメールを送付することの自粛を命ずること等が有効です。
(2)システムへのアクセス制限
テレワークを行う際に、企業等の社内システムに外部のパソコン等からアクセスする 形態をとる場合が多いですが、深夜・休日はアクセスできないよう設定することで長時間労働を防ぐことが有効です。
(3)テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等
業務の効率化やワークライフバランスの実現の観点からテレワークの制度を導入する場合、その趣旨を踏まえ、時間外・休日・深夜労働を原則禁止とすることも有効です。この場合、テレワークを行う労働者に、テレワークの趣旨を十分理解させるとともに、テレワークを行う労働者に対する時間外・休日・深夜労働の原則禁止や使用者等による許可制とすること等を、就業規則等に明記しておくことや、時間外・休日労働に関する三六協定の締結の仕方を工夫することが有効です。
(4)長時間労働等を行う労働者への注意喚起
テレワークにより長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・深夜労働が生じた労働者に対して、注意喚起を行うことが有効です。
具体的には、管理者が労働時間の記録を踏まえて行う方法や、労務管理のシステムを活用して対象者に自動で警告を表示するような方法があります。
4 労働安全衛生法の適用及び留意点
4-1 安全衛生関係法令の適用
労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を 講じる必要があります。
具体的には、
・必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条から第66条の7まで)
・長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置(同法第66条の8及び第66条の9)及び面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則<昭和47年労働省令第32号>第52条の2)
・ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条の10)
等の実施により、テレワークを行う労働者の健康確保を図ることが重要です。
また、事業者は、事業場におけるメンタルヘルス対策に関する計画である「こころの健康づくり計画」を策定することとしており(労働者の心の健康の保持増進のための指針<平成18年公示第3号>)、当該計画において、テレワークを 行う労働者に対するメンタルヘルス対策についても衛生委員会等で調査審議の上記載し、これに基づき取り組むことが望ましいです。
加えて、労働者を雇い入れたとき又は労働者の作業 内容を変更したときは、必要な安全衛生教育を行う等関係法令を遵守する必要があります(労働安全衛生法第59条第1項及び第2項)。(厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」抜粋)