新型コロナウイルスに感染しても、無症状の人や軽症者は自宅療養となることがある。家庭内に感染者がいる場合について、厚生労働省は〈家族は感染者と部屋を分ける〉〈感染者の世話は1人に限る〉〈全員マスクを着用〉――などの注意点をまとめている。
 
 これらに加えて、北九州市立八幡病院の伊藤重彦院長(地域感染対策)は、感染リスクをさらに抑える対応を提案する。
 
 例えば、トイレ、洗面所など共用部分の消毒は、症状が軽ければ、感染者自身が行う方が確実。どこに触れたかは、本人が一番わかっているからだ。
 
 洗濯についても、より安心な方法がある。伊藤さんによると、新型コロナウイルスの生存期間は、付着した表面の素材や環境により異なるものの、平均4〜7日程度とされる。そこで、感染者は衣服を1日分ずつポリ袋などに入れて密閉。洗濯は3〜4日ほど置いてウイルスが減ってから行うといい。
 
 「ウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)は、下に落ちるまでしばらく空中を漂います」と伊藤さん。感染者はできるだけ部屋から出ず、部屋の扉は閉めておき、こまめな換気で空気を入れ替える。食事も部屋でとるようにする。食事を渡す際は、家族も感染者もマスクを着ける。食器を回収する際は、特に注意が必要だ。食事中はマスクを外すため、飛沫が出やすい。食後15〜30分ほどたち、飛沫がテーブルや床に落ちてから回収することで、家族への感染リスクを減らすことができる。
 
 伊藤さんは「自宅療養中も、家族全員がマスク、手洗い、消毒など、基本的な取り組みを怠らないことが大切。ウイルスについて知ることで、確実な感染予防につなげてほしい」と話す。(このシリーズは饒波あゆみが担当しました)

家庭に感染者がいる場合の注意点 (厚労省の資料を基に作成)
・部屋を分ける。難しい場合はカーテンなどで仕切る。本人はできるだけ部屋から出ない
・感染者の世話は限られた人が行い、持病のある人や妊婦などは避ける
・全員がマスクを着用
・こまめに手を洗う
・定期的に換気する
・共用部分を消毒。タオルは共用しない。タオル、衣類、食器などは通常の洗濯や洗浄でよい
・汚れたリネンや服を洗濯する際は、手袋とマスクを着ける
・ごみは密閉して捨て、直ちに手を洗う