まもなくスタートする大学入試。年が明けて1月からは共通テストが始まり、受験生はラストスパートの時期だろう。コロナ禍、受験年齢の18歳人口の減少のなか、いま大学受験を巡って大きな異変が起きている。

 全国の私立大学の約半数が入学者の定員割れだという。日本私立学校振興・共済事業団が調査した2021年度春の私立大学の入学志願者は、前年度から53万3000人減った383万4000人。

 一方、定員に対し合格した学生が入学する入学者の割合(入学定員充足率)は99.81%と、同団体が調査を開始後初めて100%を切った。調査に回答した全国の私立大学597校のうち46.4%、実に約半数の私立大学が定員割れに追い込まれているのである。

 合格者は143万7906人と前年比約9万人増えているが、これは大学が入学辞退者を予想し、入学者を確保するため合格者を増やした結果だ。

 18歳人口は1992年の204万9000人をピークに減少をたどり、昨年は116万7000人、そして今年は114万1000人と減少している(文科省学校基本調査)。

 大学入学者の定員割れ、志願者減による受験生への影響を流通科学大学特任教授・長田貴仁氏が説明する。

「この傾向は今後も変わりません。大学を選ばなければ100%入学は可能です。しかし、生き残る大学と残れない大学が出てくるでしょう。文部科学省の定員超過の是正指導で、難易度の高い大学の合格はさらに難しくなり、そこを狙っていた学生はその下のランクの大学を受験しています。その結果、ややランクの下がる大学も人気が出てランクを上げている」

 ただ、地方の大学や小規模な大学は志願者の減少や定員割れで厳しい経営を迫られるという。

 先の団体の調査でも、定員が1500人以上の大学は入学定員充足率が100%水準で定員を確保しているが、300人以上400人未満の大学は95.2%。100人未満では87.2%まで下がる。

 少子化の影響は志願者、入学者が潤沢に集まる人気大学でも、学生確保のための改革は避けて通れず、規模の拡大と効率化のため統合、合併する大学が急増してきた。

 国立大学では昨年4月に名古屋大学と岐阜大学が経営統合、来年4月には大阪市立大学と大阪府立大学が統合し日本最大の公立大学となる。私立大学でも同様で、昨年4月に関西国際大学と神戸山手大学が統合し関西国際大学に、23年には慶応義塾大学が東京歯科大学と統合する計画もあるという。一方、医療、調理系の専門職大学の新設も盛んだ。先の長田氏が言う。

「手に職をつけるだけではなく、4年間専門大学で経営も学ぶことで人生設計がより大きく描ける。低成長時代のなか、目的を持たず皆が行くからと大学進学する傾向はなくなるでしょう」

 大学の在り方、意味が問われる時代になった。

(ジャーナリスト・木野活明)

 

少子化による18歳人口の減少に予期せぬ新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、家庭の経済的な悪化による大学中退者も増え、未だ感染収束の目途が立っていない状況では、来年度も受験者数の減少により受験料収入も減り、入学定員割れの私立大学が、今年以上に出ると思います。

私立大学の倒産と廃校、吸収合併を余儀なくされる大学が出て、厳しい冬の時代到来と思います。