記者会見で答える斎藤元彦・兵庫県知事

 自ら命を絶ってまで抗議した兵庫県の元西播磨県民局長の男性(60)が作成した告発文により、明るみに出た斎藤元彦県知事のパワハラ気質。男性の告発文では、斎藤知事のおねだり体質なども指摘されるが、ナルシスト的な一面も見え隠れする。

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■出張の度に「鏡」の有無を確認

「出張先のトイレの確保、場所の確認をかなりうるさく言われるようで、その理由は知事が鏡をみるため。鏡がなければ、担当課が鏡を用意しておかないと怒られるそうです。(略)出張の度に鏡の準備を強いられるのは、些少な事柄ですが、異常さを感じます」

 これは、丸尾牧・兵庫県議(無所属)が県の職員に対し独自に行ったアンケート調査の回答だ。6月13日に百条委員会の設置が決まり、議会は告発文の真相解明に動きつつあるが、当初は確信的な情報が得られなかった。

 丸尾県議は4月26日には県庁周辺、5月31日には阪神北県民局、6月3日には阪神南県民センターと、計3カ所でアンケート調査を実施。「県職員ですか?」と確認し、アンケート用紙と返信用封筒が入った封筒を配布したという。

 丸尾県議はこう話す。

「県庁周辺では、200枚くらいアンケート用紙を受け取ってくれれば御の字と思っていましたが、予想外に反応が良かった。7時40分から9時までの間に準備していた300枚がすべてはけた。それだけ、県職員も鬱憤がたまっていたのかもしれません」

 6月24日時点で、元職員1人を含む27人から回答を得ている。

「庁外での公務イベント時には、目的地に15分前に着かないと激怒」

「物欲もかなりのもので、海苔の頂き物が段ボール一箱あったそうですが、知事がすべてを持ち帰る」

7月8日、元県民局長死亡の一報を受けて取材に応じる、兵庫県の斎藤元彦知事

■「ヘルメットなし」で復旧工事がストップ

 告発文にある斎藤知事のパワハラ気質やおねだり体質がうかがえる回答とともに散見するのが、冒頭で取り上げたような斎藤知事の異常なまでに見られ方を気にする姿だ。

「イベントの際、更衣室と姿見(鏡)を用意するのも、マストで、担当職員が、段ボールで、包んだ姿見を運んでいる」

「知事が天神川の復旧の現場を視察に来た時に、ヘルメットをかぶらないと言ったため、ヘルメット無しでは現場に入れないので現場工事を止めました。一刻も早く復旧しなければならない時に知事のわがままで、住民の生活再建を遅らせるのは、おかしいと思います」

 確かに、当時の報道を見てみると、作業服姿だが、ヘルメットなしで現場を視察している斎藤知事の姿を確認することができる。

 

独自に県職員へのアンケートを行った丸尾牧県議

■百条委員会の資料としても提出

 丸尾県議のアンケート調査で見えてきた具体事例の数々。その事実関係を県広報課に尋ねると「百条委員会の資料としても提出されており、現段階で県としてのコメントは差し控えたい」と回答した。

 丸尾県議はアンケートから得た回答を検証する作業を独自に進めているが、斎藤知事が既に認めた事案もある。今年3月に兵庫県尼崎市で行われた兵庫ユニバーサルマラソンでのことだ。

「知事の意を受けた秘書課の強い要求により、一般人用の授乳室をクローズドにして、知事専用の個室に一時的に切り替えざるを得なかった。実際、授乳室を利用したいママさんが、クローズドな状況で困っていた。イベント時、いかなる場所でも個室の確保を強く強要する姿勢及び一般県民にもご迷惑をおかけしている事態は許されない」(丸尾県議のアンケート結果より)

■7月16日の会見で続投の意向

 このことについて問われた斎藤知事は5月22日の会見で「施設のスペースを一時使用したことは事実です」とした上で、こう答えている。

「着替える部屋が用意されることは伺っていましたが、その部屋が授乳室であることは、私は正直認識していなくて、到着もかなりぎりぎりになって、バタバタと着替えて、外に行ったので、今回の取材等の指摘の中でそこが授乳室だったことを初めて認識したのが正直なところです」

 県職員労働組合が知事の辞職を求める申し入れをし、右腕である片山安孝副知事は辞職届を提出。今月14日には、前回知事選で斎藤知事を推薦した自民党の末松信介県連会長から「正しい決断を」と事実上、辞職を求められた。

 四面楚歌状態の斎藤知事。それでも、3連休明けの16日の会見では、改めて続投の意向を示した。ある兵庫県議は呆れ顔で、こうこぼした。

「メンタルが強いとしか言いようがない」

(ライター 澤田晃宏) dialog">×</button>