兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラなどの疑惑を内部告発された問題を巡り、日本維新の会が対応に苦慮している。2021年知事選でともに推薦した自民党が辞職を促す中、吉村洋文共同代表(大阪府知事)ら幹部は静観を続けており、党内からは「対応が後手だ」として、地盤とする関西での影響力低下を懸念する声も出ている。

 吉村氏は19日、府庁で「百条委には事実を明らかにしてほしい」と報道陣に語った。斎藤氏自身に説明責任を果たすよう促したものだが、維新内からは「知事選で推薦した斎藤氏をかばっているように見える。次期衆院選に影響があり、辞職を迫るべきだ」(中堅)との不満も漏れている。

 斎藤氏を巡っては、県幹部だった男性職員が3月、告発する文書を報道機関などに配布。斎藤氏は「うそ八百」と否定したが、県議会は6月、自民主導で地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委)の設置を決めた。男性は出席を予定したが、今月7日に死亡しているのが見つかった。自殺とみられる。

 斎藤氏に辞職を求める声も強まっており、12日には県政の混乱を招いたとして副知事が辞職意向を表明した。複数回にわたって辞職を求めたことも明らかにしたが、斎藤氏は「県民の負託を受けた」と続投する考えを示したままだ。

 対応を決めかねている維新に対し、自民県連の末松信介参院議員は14日の県連大会で「正しい決断をしていただきたい」と訴え、事実上の辞職を要求。次期知事選で公明、立憲民主両党との共闘で「関西で維新の勢いをそぐ好機だ」(中堅)との声も上がっている。

 これに対し、維新の遠藤敬国会対策委員長は即座に反応し、「自民は完全に他人事みたいだが、製造物責任の一翼を担っている」と皮肉った。ただ、「焦りの裏返し」(維新関係者)と見る向きも多く、「疑惑が晴れないと次は戦えない」と不戦敗論も出ている。