チェット・ベイカーとともにウェストコーストジャズの雄として君臨していたアート・ペッパーですが、東海岸の黒人バッパーと共演した作品が2つあります。1つは1957年の「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」。当時のマイルス・デイヴィス・クインテットのリズムセクションであるレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズと共演した作品です。ジャズ名盤特集にも必ず取り上げられるほどの有名盤で、私も20代半ばのジャズ初心者の頃には既に持っていました。一方、今日ご紹介する「ゲッティン・トゥゲザー」はそれに比べると地味な扱いを受けています。ただ、こちらも録音当時(1960年2月)のマイルス・デイヴィス・クインテットのリズムセクションが加わっており、メンバー的には十分豪華です。ただし、3年経ってメンバーも代わっており、ベースのチェンバースは同じですがピアノはウィントン・ケリー、ドラムはジミー・コブです。さらに、7曲中3曲でトランペットのコンテ・カンドリが参加しています。
この作品で変わっているのが2曲目”Bijou The Poodle”と7曲目”Gettin’ Together””でペッパーがアルトではなくテナーサックスを吹いていること。どちらもペッパーの自作曲で前者は当時流行し始めたフリージャズを意識したのか変テコなメロディの曲ですが、後者はブルースでペッパーの渋いテナーソロを聴くことができます。とは言え、やはりペッパーはアルトの方がいいですね。1曲目”Whims Of Chambers”はポール・チェンバースのオリジナル曲(「ウィムズ・オヴ・チェンバース」収録)で、チェンバースのズンズンと刻むリズムをバックにペッパー→ケリー→コンテと快調にソロを取ります。4曲目”Softly As In A Morning Sunrise”(朝日のようにさわやかに)も定番スタンダードで選曲自体はベタですが、ペッパーの奔放なアドリブで新たな命を吹き込んでいます。セロニアス・モンクの”Rhythm-a-Ning”も意外な選曲ですが、ペッパーはじめ全員楽しそうに演奏しています。バラード2曲も素晴らしいです。1曲は当時ジャズピアニストとして活躍していたアンドレ・プレヴィンの曲”Why Are We Afraid”。プレヴィンが音楽監督をした「地下街の住人」という映画の曲らしいですが、なかなかの名曲です。もう1曲はペッパー自作の”Diane”。妻ダイアンに捧げた名バラードで、ペッパーも何度も演奏している愛奏曲です。優しく美しい旋律でペッパーのソロもため息の出る美しさです。ケリーのピアノソロも絶品ですね。以上、聴けば聴くほど味が出る作品で、個人的には「ミーツ・ザ・リズム・セクション」よりも内容は上ではないかと思いますがどうでしょうか?