本日は薄命のアルト奏者アーニー・ヘンリーについてご紹介したいと思います。31歳で早死にしたため録音数こそ限られていますが、セロニアス・モンクの有名盤「ブリリアント・コーナーズ」やファッツ・ナヴァロの「ザ・ファビュラス・ファッツ・ナヴァロ」、ディジー・ガレスピー「アット・ニューポート」など歴史的に重要な作品に参加しているので、ジャズファンなら名前ぐらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?ただ、それらの作品でのヘンリーはあくまで脇役。アルト奏者ヘンリーの実力を知るにはリーダー作を聴くのが一番ですが、残された作品はリヴァーサイドの3枚のみ、しかも全て入手困難のレア盤とあって、唯一私が手元に持っているのが本作「セヴン・スタンダーズ・アンド・ア・ブルース」です。録音年月日は1957年9月30日。ウィントン・ケリー(ピアノ)、ウィルバー・ウェア(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)をリズムセクションに従えたワンホーン作品です。
全8曲。タイトルが示すようにスタンダードが7曲、オリジナルのブルースが1曲と言う構成です。しかもスタンダードの内訳は”I Get A Kick Out Of You"”My Ideal""I've Got The World On A String""Sweet Lorraine""Soon""Lover Man""Like Someone In Love"と馴染みのある曲ばかり。それらをアルトのみのワンホーンで演奏するのですから、下手をすればとんでもなく陳腐な作品になってしまうおそれもあります。ただ、聴いてみると非常に耳心地の良い作品に仕上がっています。どの曲も水準以上ですが、中でもおススメはウィントン・ケリーのトロピカルなピアノで始まる”I Get A Kick Out Of You"とスインギーなミディアム調に料理された"I've Got The World On A String"”Soon"あたりでしょうか?1曲だけ収録されているヘンリー作のブルース”Specific Gravity"も出色の出来。典型的なスローブルースで後半に向けて静かに燃え上がっていく様が最高です。
ヘンリーのアルトは特に強いクセもなくストレートに胸に響いて来るような感じですね。ウィントン・ケリーもソロにバッキングにいつもながら安定のパフォーマンス。彼とウィルバー・ウェア、フィリー・ジョー・ジョーンズによる最高のリズムセクションが本作の質を高めていることは間違いないでしょう。アルトのワンホーンによるスタンダード集と言えばジャッキー・マクリーンの「スイング・スワング・スインギン」が有名ですが、個人的にはこちらの方に軍配を上げたいと思います。結局、ヘンリーはこのセッションの3ヶ月後に31歳の短い生涯を終えます。原因はヘロインの過剰摂取。一体この時期どれだけの才能あるジャズマンがドラッグで身を滅ぼしたことか・・・残された素晴らしい演奏を聴くにつれ、もったいないと思わずにいられません。