本日は白人ドラマー、スタン・リーヴィをご紹介したいと思います。シェリー・マン、メル・ルイスと並ぶ西海岸3大ドラマーの1人で、50年代のウエストコーストジャズ全盛期を縁の下の力持ちとして支えました。ただ、もともとは東部フィラデルフィアの出身で、40年代にはディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーのバンドでもプレイしていたようです。50年代半ば以降は西海岸に定住し、ドラマーとして数々のセッションで活躍するとともに、ベツレヘムやモードにリーダー作をいくつか残しています。本作「グランド・スタン」はベツレヘムに残された彼の代表作の一つ。メンバーはコンテ・カンドリ(トランペット)、リッチー・カミューカ(テナー)、フランク・ロソリーノ(トロンボーン)、ソニー・クラーク(ピアノ)、リロイ・ヴィネガー(ベース)、そしてスタンからなるセクステットです。フロントの3人はいずれもウェストコースト随一の名手ですが、ジャズファン的には西海岸時代のソニー・クラークの参加も目を引くところです。
全8曲、スタンダード3曲、オリジナル5曲と言う構成です。ユニークなのは1曲目から3曲目まではそれぞれ1人のプレイヤーにスポットライトが当たることで、冒頭のスタンダード"Yesterdays"はフランク・ロソリーノのパワフルなトロンボーン、続く"Angel Cakes"はソニー・クラーク作曲ながらリッチー・カミューカのクールなテナープレイが全面的にフィーチャーされます。一方、クラークは次のスタンダード"Why Do I Love You?"で3管をバックに2分半に及ぶ圧巻のピアノソロを披露します。4曲目”Grand Stan”と5曲目”Hit That Thing”は3管+クラークがソロをリレーしていく展開で、どちらも典型的なウェストコーストサウンド。後者にはリーダーのスタンによる2分間のドラムソロも付いています。6曲目”Blues At Sunrise”はソニー・クラーク作のブルースでクラークは後に名盤「ソニー・クラーク・トリオ(タイム盤)」でも"Blues Blue"のタイトルで再演しています。ただ、本作ではクラークはソロを取らず、コンテ・カンドリがマイルス・デイヴィスばりのミュートプレイを聴かせてくれます。7曲目”A Gal In Calico”はマイルスの「ザ・ミュージングス・オヴ・マイルス」のバージョンが有名ですが、3管+クラークの洗練されたソロが聴ける本作の演奏も最高です。ラストの”Tiny’s Tune"はクラークがバピッシュなソロで先陣を切り、3管の小気味良いソロリレーで締めくくります。以上、基本はウェストコーストジャズなのですが、ソニー・クラークを中心にハードバップの香りもどことなく感じられるなかなかの良作です。