ハードバピッシュ&アレグロな日々

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ズート・シムズ・オン・デュクレテ・トムソン

2024-06-05 18:32:07 | ジャズ(ヨーロッパ)

アメリカのジャズマン達が大挙してヨーロッパに移住するようになるのは1960年代以降のことですが、もちろんそれ以前にも演奏活動でヨーロッパを訪れることは多くありました。特にフランスは現地のジャズマンにも名手が多く、渡仏したアメリカのジャズマンとのセッションが多く記録されています。本日ご紹介する「ズート・シムズ・オン・デュクレテ・トムソン」もその一つ(ちなみにデュクレテ・トムソンとはレコード会社名です)。録音年月日は1956年3月16日、ズート・シムズと共演するのはアンリ・ルノー(ピアノ)、ブノワ・ケルサン(ベース)、シャルル・ソードレー(ドラム)の現地リズムセクションで、そこにアメリカ人のジョン・アードレイ(トランぺット)が加わるという布陣です。ルノーは当時のフランスを代表するピアニストで、クリフォード・ブラウンのパリ・セッションVol.1Vol.2、Vol.3にも参加していますし、デュクレテ・トムソンには自身のリーダー作も残しています。ジョン・アードレイはニューヨークで活躍した白人トランぺッターで、地味な存在ではありますが一応プレスティッジにも1枚リーダー作を残しています。

アルバムはアンリ・ルノーのオリジナル”Captain Jetter"で始まります。やや哀調を帯びた歌謡曲風のメロディが印象的です。この曲もそうですが、全体を通してバップ色は薄めで、スイング~中間派風の演奏ですね。ズートは元々スイング寄りですが、ジョン・アードレイのトランペットも乾いた感じの音色で、バリバリ吹くという感じではありません。2曲目”Nuzzolese Blues"はズート、アードレイ、ルノーの共作となっていますが、おそらく即興のブルースでしょう。全員白人ですが、きちんとブルースになっています。3曲目”Everything I Love"、5曲目”On The Alamo”、6曲目”My Old Flame"はいずれも歌モノスタンダード。ズートの真骨頂である歌心溢れるテナープレイが存分に堪能できます。アードレイ、ルノーのソロもまずまず。4曲目”Evening In Paris"はクインシー・ジョーンズ作のバラードで、この曲はズートのワンホーンです。ラストの”Little Jon Special"はアードレイ作でスインギーな演奏で締めくくります。なお、ズートとルノーは1961年にもユナイテッド・アーティスツ盤「ズート・シムズ・イン・パリ」で共演しており、そちらも良い作品ですのでまたの機会に取り上げたいと思います。

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