ハードバピッシュ&アレグロな日々

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チェット・ベイカー/ピクチャー・オヴ・ヒース

2024-06-27 21:12:47 | ジャズ(ウェストコースト)

前回のジャズ・メッセンジャーズ「ハード・ドライヴ」でチェット・ベイカーの「ピクチャー・オヴ・ヒース」について取り上げましたので、ついでに深掘りしてみたいと思います。この作品、当時のウェストコーストを代表する2大スター、チェット・ベイカーとアート・ペッパーの共演作として1956年にパシフィック・ジャズから鳴り物入りで発売されましたが、発売当時は「プレイボーイズ」のタイトルでお色気たっぷりの白人女性のジャケットでした。ヌードグラビアで有名な青年誌プレイボーイと当時イケメン白人トランぺッターとして女性に大人気だったチェットをかけたのでしょうが(一応Playboysなのでアート・ペッパーも含まれるのかな?個人的に彼をハンサムとは思いませんが・・・)、1961年に再発売された際にタイトルも改変、ジャケットも差し替えられたようです。どうやらプレイボーイ誌から訴えられそうになったらしいですね。

(左)ピクチャー・オヴ・ヒース (右)プレイボーイズ

 

内容的にはタイトル通りジミー・ヒースの曲を中心に構成されています。実はこの時期ヒースはヘロイン売買の罪でペンシルヴァニア州の刑務所で服役中でした(「ザ・クオータ」参照)。その彼がどうして西海岸のチェットのために曲を書き下ろしたのか経緯は不明ですが、何らかの親交があったのでしょうね。メンバーはチェット、ペッパーの2人にこの頃チェット作品の常連だったフィル・アーソ(テナー)が加わった3管編成です。リズムセクションはカール・パーキンス(ピアノ)、カーティス・カウンス(ベース)、ローレンス・マラブル(ドラム)と西海岸で活躍していた黒人トリオが努めています。解説本によるとフロントの白人3人とリズムセクションの黒人3人は仲が悪く、セッション中は人種間の対立があったようなことが書かれていますが、聴いている限りはそんなことは全く感じさせない非常にまとまった演奏です。

全7曲。うちヒースのオリジナルが5曲収録されていますが、中でも前半4曲が素晴らしいですね。オープニングはタイトルトラックの”Picture Of Heath"。ヒースがこの作品のために書き下ろした軽快なハードバップで、3管による魅惑的なテーマ演奏の後、メンバー全員が快調にソロをリレーして行きます。続く”For Miles And Miles”はゆったりしたテンポの優しいメロディ。この辺りヒースがウェストコーストサウンドを意識して書いたのか上品な曲です。3曲目”C.T.A."はマイルス・デイヴィスのブルーノート盤で有名なヒースの既存作。後にリー・モーガンも「キャンディ」で取り上げましたが、マイルス、チェット、モーガンと各トランぺッターの聴き比べもまた楽しいですね。”For Minors Only"は後にヒース自身も「ザ・サンパー」でセルフカバーしましたが、初出は本作です。文字通りマイナーキーの熱いハードバップです。後半はアート・ペッパーのオリジナルが2曲”Minor Yours"”Tynan Time”とヒース作品が1曲”Resonant Emotions"ですが、出来はまずまずと言ったところ。演奏面では主役のチェットとペッパーの素晴らしさは言うまでもないですが、フィル・アーソやカール・パーキンスらもクオリティの高い演奏を聴かせてくれます。

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