ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジャズ・メッセンジャーズ/ハード・ドライヴ

2024-06-26 18:49:31 | ジャズ(ハードバップ)

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの結成当初の経緯については以前「ハード・バップ」の頁で述べましたが、初代ジャズ・メッセンジャーズで音楽的イニシアティブを握っていたホレス・シルヴァーが脱退した後、グループは”暗黒時代”と称される人気低迷期に入ります。とは言え、活動自体は積極的に行っており、1956年末から1957年の1年間で残した作品は計9枚に及びます。内容は玉石混交なところはなきにしもあらずですが、個人的にはそのうち半分ぐらいの作品は十分傾聴に値すると思います。1957年10月にベツレヘム・レコードに吹き込まれた本作「ハード・ドライヴ」もなかなかの良作です。

本作のメンバーですが、リーダーのブレイキー(ドラム)に加え、ビル・ハードマン(トランペット)とスパンキー・デブレスト(ベース)と暗黒時代ジャズ・メッセンジャーズを支えた2人が名を連ねます。注目はジョニー・グリフィン(テナー)とジュニア・マンス(ピアノ)とシカゴ出身の2人の名手が加わっていること。グリフィンはこの年に収録されたジャズ・メッセンジャーズの作品にあらかた顔を出していますが、ジュニア・マンスの同グループへの参加は後にも先にも本作のみです。

全7曲。全てメンバーまたは他のジャズマンのオリジナル曲で構成されています。オープニングを飾るのはジミー・ヒース作の”For Minors Only”。ヒースはテナー奏者としても有名ですが作曲家としても名高く(「ザ・クオータ」参照)、この曲は前年のチェット・ベイカーの名盤「ピクチャー・オヴ・ヒース」に収録されていた曲です。「ピクチャー・オヴ・ヒース」からはもう1曲"For Miles And Miles"も本作に収録されており、チェットの演奏と聴き比べるのも楽しいです。2曲目”Right Down Front"はジョニー・グリフィンがゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンにインスパイアされて書いたナンバー。ジャズ・メッセンジャーズらしからぬコテコテの曲です。3曲目”Deo-X”と続く”Sweet Sakeena”はビル・ハードマンのオリジナルでどちらも疾走感溢れるハードバップ。なお、前者はジュニア・マンスではなく、暗黒期ジャズ・メッセンジャーズのピアニストであるサム・ドッカリーがピアノを弾いています。後者はブレイキーの娘サキーナちゃんに捧げた曲。ブレイキーはよほど娘思いだったのか、同年の「キューバップ」でも”Sakeena"、1960年の「ザ・ビッグ・ビート」でも”Sakeena's Vision"という曲を残しています。6曲目グリフィン作の快調ハードバップ”Krafty"を挟んでラストを飾るのが”Late Spring"。ジャズピアニストのレオン・ミッチェルが書いた曲でスタンダードのような魅力的なメロディを持った名曲です。

本作収録後の翌1958年にブレイキーはメンバーを総入れ替えし、新たにリー・モーガン、ベニー・ゴルソン、ボビー・ティモンズ、ジミー・メリットから成る新生ジャズ・メッセンジャーズを結成。伝説的名盤「モーニン」を皮切りに次々とヒット作を発表します。それら黄金時代の傑作群に比べると無視されがちですが、暗黒期と切って捨てるにはもったいない良質のハードバップ作品と思います。

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