ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジャッキー・マクリーン/ア・フィックル・ソーナンス

2024-06-25 18:53:13 | ジャズ(ハードバップ)

ジャッキー・マクリーンは1962年の「レット・フリーダム・リング」でフリージャズ路線に突入したと言われていますが、何も突然180度スタイルを変えたわけではなく、それ以前から少しずつ脱ハードバップの傾向を見せています。少し前に取り上げた「カプチン・スウィング」(1960年4月録音)は基本ハードバップながら1曲目の”Francisco"等にややフリーキーなトーンが見られますし、1961年10月録音の本作「ア・フィックル・ソーナンス」では半分近くが従来の調性を逸脱した感じの曲です。一方で曲によってはハードバップの残り香のようなものが濃厚に感じられますし、ジャズが大きく変わりつつあった60年代前半という時代を映し出すような作品となっています。メンバーはトミー・タレンタイン(トランペット)、ソニー・クラーク(ピアノ)、ブッチ・ウォーレン(ベース)、ビリー・ヒギンス(ドラム)から成るクインテットで、ハードバッパーのクラーク&タレンタインにオーネット・コールマンと共演歴のあるヒギンスと言う新旧織り交ぜたラインナップです。

アルバムはエキセントリックな”Five Will Get You Ten"で始まります。一応ソニー・クラークの自作曲となっていますが、どうやら本当の作者はセロニアス・モンクらしいです。ウィキペディア情報によると麻薬中毒でスランプだったクラークが友人だったモンクの楽譜を盗んだとあります。随分きな臭い話ですが、一方で譲り渡された説もあり、真偽は不明です。2曲目はマクリーン作の"Subdued"。こちらは泣きのマクリーン節が全開のスローバラード。ソニー・クラークのロマンチックなピアノソロも素晴らしいです。続くクラーク作のマイナーキーのブルース”Sundu"を経て、4曲目がタイトルトラックの”A Fickle Sonance”。こちらは完全に調性崩壊のフリージャズですが、この種の演奏に縁のないソニー・クラークが何とか頑張って付いて行こうとしているのがわかります。ラストの2曲は一転してストレートなハードバップ。5曲目はトミー・タレンタイン作の”Enitnerrut”。変な曲名ですが、Turrentineを逆さ読みしただけです。ラストのブッチ・ウォーレン作”Lost”はややラテンフレーバーの快適ハードバップ。どことなくスタンダードの”Old Devil Moon"に似た曲調です。個人的には何だかんだ最後の2曲がしっくり来ますね・・・

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