ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ケニー・ドーハム&ジャッキー・マクリーン/インタ・サムシン

2024-06-04 18:34:19 | ジャズ(ハードバップ)

パシフィック・ジャズと言えば、チェット・ベイカー、ジェリー・マリガン、バド・シャンクらを擁し、ウェストコーストジャズを支えたレーベルですが、一方でテディ・エドワーズ、レス・マッキャン、ジャズ・クルセイダーズなど黒人ジャズマンの作品も多く発表しています。ただ、彼らの共通項は全員LAを拠点にしていることで、基本的に東海岸のハードバッパー達とは無縁です。そんな中珍しいのが本日ご紹介するライヴ盤「インタ・サムシン」。東海岸ジャズシーンの重鎮であるケニー・ドーハムとジャッキー・マクリーンがサンフランシスコの名門クラブ、ジャズ・ワークショップに出演した際のライブ録音です。録音年月日は1961年11月13日。リーダー2人以外のメンバーもウォルター・ビショップ・ジュニア(ピアノ)とアート・テイラー(ドラム)は東海岸の面々で、リロイ・ヴィネガー(ベース)のみがウェストコースターです。

内容ですが、基本はハードバップをフォーマットとしつつ、やや60年代っぽい空気も感じられます。ドーハムはこの後ジョー・ヘンダーソンら新主流派の面々を起用した「ウナ・マス」でイメージチェンジを図りますし、マクリーンはこの4ヶ月後にフリージャズを大胆に取り入れた「レット・フリーダム・リング」を吹き込みます。本ライブ自体はそこまで先鋭的な演奏はありませんが、そういった時代の境目にあったと思いながら聴くとより楽しめると思います。実際、1曲目ドーハム作"Us"は上記「ウナ・マス」のタイトルトラック”Una Mas"と異名同曲ですし、マクリーンがワンホーンで奏でる”Let's Face The Music And Dance”も2年前のブルーノート盤「スイング・スワング・スインギン」でも取り上げたスタンダードの再演ですが、心持ち音が尖っているような感じがします。一方でドーハムのワンホーンによるスタンダード”It Could Happen To You”やフランク・レッサー作曲のミュージカルナンバー”No Two People"はクセのないほのぼのミディアムチューンです。個人的好みで言えば後者の方が好きですね。マクリーンが得意の泣きのアルトを聴かせる"Lover Man"を挟んでラストはドーハムのオリジナル”San Francisco Beat”。おそらくこのライブのために作曲されたバップナンバーで、メンバー全員のホットな演奏で締めくくります。

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