広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

牧野植物園2

2010-04-01 22:55:43 | 動物・植物
植物学者 牧野富太郎を記念した、高知市の「高知県立牧野植物園」。
今回は、旅行記番外編として、南門近くの南園にある、広々として花盛りだった開園50周年記念庭園を中心に植物をご紹介します。
※アクセス等は旅行記の記事をご覧ください。

秋田では温室や鉢植えでしか見られない植物が、地植えされていた
ゴクラクチョウカ(ストレリチア)

いわゆる「クリスマスローズ」
ちなみに、ヘレボルス(ヘレボラス)という植物の中で、クリスマス頃に開花するものだけを「クリスマスローズ」と呼ぶそうだが、日本ではそれ以外の時期に咲くものもクリスマスローズと呼ぶことがあるとのこと。これはどっちなんだろう?
【2016年4月30日追記】クリスマスローズは耐寒性があり、秋田でも地植えされていることがありました。当時は知らなかった…
とにかく、やっぱりここは南国だ。

園内に「土佐寒蘭センター」という建物がある。
日本にも蘭が自生する。北日本ではシランやネジバナはよく見るが、南日本に自生するカンランという種を栽培化したものが展示されている。
 
秋から冬に咲くのでカンラン(寒蘭)というそうだが、今も花が咲いていた。派手ではないが、品のある花。栽培は非常に難しいそうだ。

お正月にめでたい植物として、赤い実を付ける植物が飾られる。
センリョウ(千両)やマンリョウ(万両)が有名だが、別名「百両」と言われるカラタチバナという植物があり、その園芸品種が展示されていた。
 
写真は白い実の株と縮れた葉の株。百両の名前は知っていたが、北日本には自生していないこともあり、見るのは初めて。マンリョウとカラタチバナは近縁で、「ヤブコウジ科」に属する。ヤブコウジという植物もあり、これは秋田市の千秋公園などの山や民家の庭に生えている。高さ15センチくらいのとても小さな「木」で、赤い実を付けるので、別名「十両」と言われるそうだ。

竹が植えられた一角も。北日本ではササが多く、タケは少ないので、竹林自体珍しいが、珍しい種のタケもあった。
 
金色と緑に色分けされているのはマダケの変種の「キンメイチク(金明竹)」。節が変わった形なのはモウソウチクの変種「キッコウチク(亀甲竹)」。いずれも初見。

春を告げるコブシの仲間も花盛りから終わりかけ。
これはコブシかな?
「北国の春」の歌詞の影響か、寒い土地の植物だと思ってしまいがちだが、高知にも自生するようだ。
北日本に多いのは、コブシの変種「キタコブシ」だが、これも近くで咲いていた。コブシに比べ、木・花ともやや大きく、枝分かれが少ないとの解説だったが、いまいち違いが分からない。
千秋公園にあるのは、どっちだろう。もう数週間で咲くかな。

もう少し経てば、もっと花が咲くのだろうが、それでも
桜・菜の花・サクラソウが咲いて、春、真っ盛り
後ろの方で濃いピンクの桜が咲いている。
 
一重咲きだが、花弁が大きく存在感がある。
おそらく高知城で咲いていた早咲きの桜もこれだと思うし、この植物園内でもたくさん咲いていた。
「センダイヤ(仙台屋)」という品種で、東北の仙台から高知に移って商売を始めた「仙台屋」の屋敷で咲いていたことから名付けられた桜で、牧野富太郎が好んだという。
宮城のヤマザクラの系統らしいが、遠く離れた高知で親しまれているようだ。
牧野富太郎の銅像。柄の長いキノコ(?)を持っている

マンサク科「トサミズキ」の花
「土佐」と名前が付いているが、北日本にはないのだろうか。初めて知った。
春先に淡い色の花を咲かせるのが、いかにもマンサクの仲間らしい。

最後に、展示されているのではなく、園内に自生している植物でも初めて見たものがあった。
 
白いタンポポ。西日本に多く分布する「シロバナタンポポ」だと思われる。
秋田では在来種でも黄色いタンポポしか見たことがないが、西日本では場所によっては白花がわりとメジャーなようだ。(今はセイヨウタンポポが増えてしまったけれど)
一般的に、日本在来種のタンポポは、萼の下の「総苞片」が反り返っていないのが特徴だが、シロバナタンポポは少し反り返っており、このタンポポもセイヨウタンポポほどではないが、やや外向きになっていた。
花は真っ白ではなく、舌状花という外側部分が白く、中央部は黄色い。舌状花の枚数は他の種より少ないようだ。

2時間かけてじっくり回った。
最後にミュージアムショップに寄ると、牧野自身のスケッチを元にした一筆箋など、手頃で植物好きにはうれしいオリジナルグッズが揃っていた。
ショップは園内に2店あり、経営者が違うので、商品構成が若干異なるかもしれない。

北国に住む者としては、同じ日本国内の温帯地域なのに、秋田とは違う植物がたくさんあり、初めて見た種も多くとても見応えがあった。
また、今まで訪れた植物園や植物をテーマにした公園の中には、手入れが追いつかず荒れている一角がたいていあったものだが、ここは隅々に至るまでとてもよく手入れが行き届いていたように感じた。
動物園や水族館ほど派手に脚光を浴びる施設ではないが、植物と人の関わり、高知が生んだ牧野富太郎の功績を伝える施設として、もっと注目されていいと思う。

間もなく完成する温室や、夏など他の季節にも来てみたいけれど、暑いのが苦手だから、融けてしまうだろうな…
帰りも遍路道の石段を下りていったが、行きと別の場所に出てしまった。でも川沿いの道路なので容易にバス停にたどり着けた。日頃歩いているせいか筋肉痛にはならなかったが、膝やもものヘンな場所が数日間痛くなった。
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牧野植物園

2010-04-01 19:21:54 | 旅行記
【四国旅行記11】旅行記の最初の記事はこちら、直前の記事はこちら
牧野富太郎(1862-1957)をご存じだろうか。
我が国の近代植物学に多大な功績をもたらした植物学者で、我々が見慣れた植物の中には、彼によって発見・命名(和名・学名とも)されたものも多い。
牧野は高知県出身で、高知市の五台山という所にその名を冠した「高知県立牧野植物園」がある。

植物好きの端くれとして、牧野は知ってはいたが、高知出身で植物園があるとは知らなかった。坂本龍馬の26歳年下ということになるが、僕としては龍馬関連よりこちらに興味があるので、ほぼ半日時間を取って行ってみた。

五台山は高知市南東部、比較的海(高知港)のそばにある標高146メートルの山で、植物園のほか四国八十八箇所の1つ「竹林寺」、テレビ塔などがある。秋田市の大森山みたいな場所かな? と思っていた。
牧野は高知市の出身ではないが、自身の「植物園を造るなら五台山」との意向を元に、没後翌年にオープンした。

アクセス方法を調べると、一部サイトには「竹林寺行き路線バス」があることになっていたが、それは間違い。路線バスは(少なくとも現在は)ない。
ただし、高知駅や桂浜などを回る観光周遊バス「MY遊(まいゆう)バス」が1~2時間毎に運行され、植物園前や竹林寺前に停車する。一部情報では「土日のみ運行」となっていたので、僕はそれを信じてしまったのだが、毎日運行されているらしい。(利用の際は各自、確認願います
なお、このMY遊バスはあくまでも「乗り降り自由の観光バス」であって、路線バスではない。その事情から、料金は「大人900円の1日乗り放題」で「乗車券は事前に特定の場所でのみ発売」。
短区間だけ乗る人には割高だし、車内での現金収受は一切しない(覗いたら運賃箱がなかった)ため乗車券を持たずに飛び乗ることはできないので、注意が必要。

地図を見ると、五台山は三方を川や海に囲まれてはいるが、北側のふもとから橋を渡った数キロの所を路面電車が走っている。
秋田市のJR新屋駅から大森山の上まで歩いて行かれるように、電車を降りて五台山まで徒歩で行くことも可能に思えてきた。竹林寺へ歩いて行くお遍路さんだっているはず。
だが、北側の道路は車両用らしく、人が通れるのは急な山道らしい。地図を見てもどこにあるのか分からない。地図上で秋田市の大森山(標高123メートル)と比較すると、五台山の方が山の面積が狭く等高線が密、すなわち急傾斜のようだ。北から歩いて登るのはやめておこう。

さらに地図を見ると、山の南側のふもとから植物園近くまで階段らしき線が引かれている。そして南側のふもとを通る路線バスもあるようなので、これで行くことにした。
高知県が提供する公共交通検索サイト「アクセスこうち」(http://accesskochi.com/index.html)内の「のりかえ検索」または「駅・停留所検索」で路線バスのルートや時刻が調べられた。(秋田の某社サイトの時刻検索よりはずっと使いやすくて役に立つ)
それによれば、高知市中心部はりまや橋交差点の「デンテツターミナルビル前」バス停などから乗車できる土佐電鉄の下記のバスで、五台山南側に行かれるようだ。
「前浜・パークタウン線」(1時間に1本程度)で「五台山農協前」下車。290円。
 1つ先の「坂本前」停留所下車としている一部資料もある。
前浜・パークタウン線が通る山のふもとに沿う道は、山の反対側が川になっており、その対岸のJA高知県本部などがある大きな道路を別の路線が運行している。少し歩くが、本数が多く、料金も安い。それが、
「種崎線」または「十津団地線」(1時間に2本以上)で「南吸江通」か「三ツ石」下車。240円。
 降車後、橋を渡らなければならない。川が何本か流れていて、橋の配置が若干複雑。
両路線とも、はりまや橋より先の「知寄町一丁目」「知寄町二丁目」で乗降すると、運賃が50円安くなる。僕は路面電車の一日券を持っていたので、電車で知寄町まで行ってバスに乗った。
行きは前浜線、帰りは種崎線を利用
バスは地方によくある路線バスの光景。お客は路面電車より高齢者、特に女性の比率が高い。
中型バスの車内外がとてもきれいに整備・清掃されていることと、お客や運転士が土佐弁を話している以外、秋田のバスと同じと言っていいほど。
市街地の初乗り運賃は路面電車と同額の190円。電車通りから離れると、何となく秋田市卸町や卸売市場周辺のような雰囲気の道を走り、橋を渡ると、今度は大森山の西側、浜田地区の旧道のような狭い道を走る。途中「吸江」という場所を通るが「きゅうこう」と読む。(帰りに乗った種崎線の方は、ずっと卸売市場周辺のような道で、本当に高知市中央卸売市場前を通った)
あっという間(10分強くらい?)にJA高知市五台山支所前に到着。山側にだけ家並みがあり、反対側はすぐ川。護岸が高くて川面は見えない。バス停の少し先に高知市立五台山小学校がある。
山の上にテレビ塔とお寺が見える
その先に、地図で見つけた階段の上り口があった。この辺りでは秋田市の千秋公園の裏側にありそうな雰囲気だったが…
以後、ひらすら上るというか登る
北側とともにこちら側も「遍路道」であるようで、近年整備された公園の“階段”でなく、いにしえからの伝わる“山道”と言った方が適切かもしれない。大森山や千秋公園の比じゃない。甘く見ていた…
段の幅・高さが不均一で歩きにくく、凹凸もある。そして急傾斜が長く続く。今日は晴れているけど、雨や夜は大変そう。全行程を歩きで回るお遍路さんの体力・精神力はすごい。

たしか1度、途中で舗装道路を横断して、ふもとから10分以上かかっただろうか、竹林寺山門の前の舗装道路に出た。
 
山門には桜が咲き(5部咲きくらい)、隣には木立のサボテン? が。
お寺のすぐ斜め向かいが牧野植物園の南門
通常はここからも入園できるが、今年4月24日までは隣接する温室の工事に伴い閉鎖されており、正門からしか出入りできない。
少し上って駐車場を抜けて正門から入園。門から受付までは長いプロムナードがあった。入場料は500円だが、来月の温室リニューアル後は700円に値上げされる。(4回で元が取れる年間入園券もある)

1999年に園内に「牧野富太郎記念館(本館・展示館)」ができ、リニューアルオープンした。
写真では撮りきれないが、斬新なデザイン
ただ植物が植えてあるだけの植物園ではなく、牧野に関する展示、各種資料の保存、さらに植物学の研究施設としても機能している。
高知駅舎も手がけた、内藤廣による設計
この日はとても良い天気で、すっかり春の陽気。入園者はちらほらしかいないが、芝生で日向ぼっこやする親子連れなどもがいた。併設のフレンチレストランは、昼時には満席になっていた。わざわざ車で食べに来たのだろうが、おいしいのかな。
コブシ・モクレンや早咲きの桜が見頃だった
園内なのか敷地外なのか分からないが、スモモ畑もあり花が満開。
 
モモ・リンゴ・ナシなどよりずっと小さい花。木は青森の旧来のリンゴ畑に似た、横に枝を広げる仕立て形だが、支え(?)のパイプが張り巡らされている。

広大(17.8ヘクタール)かつアップダウンのある敷地で、見て歩くのも疲れそうだし、時間もかかる。
園内の通路(左右)と交わる、古めかしい石畳の道
園内を遍路道が横切っており(というより遍路道の中に植物園ができたのか)、受付で「歩き遍路」であることを告げると、無料で園内を通行できる。実際、本当にお遍路さんが園内を歩いていた。四国を旅していると、お遍路さんを見ることは珍しくないが、楽な旅行をしている者としては身が引き締まる思いがする。

なお、園内のショップやレストランだけを利用する場合も入園料は不要のようだ。

高知市街地は見えないが、見晴らしがいい。田んぼはもう水を張っていた。
【追記】園外の展望台からは、港など市街地方向も展望できる模様。
桜・ユキヤナギ・レンギョウ
アセビ・ボケ・ハナモモ・早咲きのツツジなども咲いていた。秋田よりは1月と少し、季節が進んでいる。
植物だけでなく、鳥も
サギのコロニー(集団繁殖地・集団営巣地)が近くにある
秋田市の勝平山のコロニーにいる3種(アオサギ、ダイサギ、ゴイサギ)に加え、さらに3種(チュウサギ、コサギ、アマサギ)もいるようだ。
秋田市のコロニーよりは距離が遠い
「これ以上近づかず、静かに観察しましょう」と書いてあったが、秋田のサギたちを見る限り、この程度の距離ならどんなに騒いだって彼らは気にしなそう。(秋田にいない3種がデリケートなのかもしれないけど)
というかここの場合、これ以上巣に近づこうとすれば、崖下に転落するよ。

とても見応えがあり、少なくとも植物が好きな方には、ぜひおすすめしたい植物園だ。
もう少し園内の植物をご紹介したいので、続きは旅行記でなく「動植物」カテゴリーで追って記事にします
旅行記としての次の記事はこちら(高知市内のいろいろ)。
コメント (4)
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