図書館から借りていた 畠山健二著 「本所おけら長屋」(五) (PHP文芸文庫)を 読み終えた。
「本所おけら長屋」シリーズの第5弾の作品である。
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畠山健二著 「本所おけら長屋」(五)
(目次)
その壱 ねのこく
その弐 そめさし
その参 はるこい
その四 まさゆめ
その五 わけあり
お江戸、本所亀沢町にある「おけら長屋」には 貧しいくせに お節介、人情に厚い住人達が 次々巻き起こる騒動に 笑いと涙で体当たりし まーるくおさめて暮している。
米屋奉公人の万造、酒屋奉公人の松吉、左官の八五郎と女房のお里、娘のお糸、後家女のお染、剣の腕は超一流の浪人島田鉄斎、万松(万造と松吉)の暴走にひきづられがちの大家の徳兵衛、畳職人の喜四郎と女房お奈津、呉服屋手代の久蔵と女房お梅、表具職人卯之吉と女房のお千代、たが屋の佐平と女房のお咲、乾物屋隠居の与兵衛、魚屋の辰次、八百屋の金太、
まるで江戸落語さながらのテンポの良い会話が飛び交い、思わず笑いが堪えられなくなったり、涙を誘われてしまう。
ことが有ろうと無かろうと まるでひとつ家族のように関わり合い、繋がり合い、肩を寄せ合う長屋の住人達、
人の優しさが心に染み込んできる時代小説である。
ほぼ 1話完結なので 読み易い。
その五 わけあり の文中の1節、
喜四郎は何も言わずに座敷に上がり込むと お京の正面に正座をして 両手をついた。
「お姉さん、おねげいがあります。直吉をうちにくだせい。お奈津の子なら それはおれの子ってことです。(中略)。
お奈津、直吉が播磨屋に行った方が幸せになれるんじゃねえかと思ってやがるのか。そんなことはねえや。断じてねえ。幸せってえのは金じゃねえんだよ。このおけら長屋で暮している人たちを見てみろ。貧乏人ばっかりだ。着物は継ぎ接ぎだらけ、店賃は溜め放題、家の中にゃなんにもありゃしねえ。だけど 泣いて笑って 助け合って楽しく暮してるじゃねえか。おれは幸せだぜ。このおけら長屋に越してきて それがわかったんだ。(後略)」
「本所おけら長屋」シリーズは 13巻まで発刊されているようで 続編も楽しみになってくる。