足腰大丈夫な内に出来る限り、不要雑物処分・身辺片付け整理をしよう等と思い込んでからすでに久しいが、正直なかなか進んでいない。それでもここ2~3年には、押し入れや天袋、物置、書棚等に詰まっていた古い書籍類等をかなり大胆に処分してきた。ただ、中には「これ、面白そう・・」等と目が止まり、残してしまった書籍もまだまだ結構有る。その中に 漫画家赤塚不二夫著、元東京学芸大学附属高等学校教諭石井秀夫指導の古典入門まんがゼミナール「枕草子」(学研)が有る。多分、長男か次男かが、受験勉強中に使っていた「枕草子」の解説本・参考書の一つのようだが、錆びついた老脳でもなんとか読めそうな、まんがで描いたくだけた内容、その内いつか目を通してみよう等と仕舞い込んでいたものだ。ながびく新型コロナ禍、不要不急の外出自粛中、ふっと思い出して、やおら引っ張りだしてみた。当然のこと、本格的な「枕草子」解説本、参考書とは異なり、限られたサワリの部分に絞ったものであるが、学生時代に多かれ少なかれ齧っていたはずの日本の代表的な古典、清少納言の「枕草子」も、ほとんど覚えていないし、「古典」に疎く、苦手な人間には、十分楽しめそうで、御の字の書である。(以上 過去記事コピペ文)
「宮廷 花の紳士録」・まんがゼミナール「枕草子」その13
第313段 「長女が童の、鶏をとらへ持て来て」
大納言藤原伊周(これちか)(関白藤原道隆の子)の教養の素晴らしさを回想した段。鶏騒ぎで、一条天皇が目を覚ましたところ、伊周が、都良香の詩の一節「鶏人暁に唱へて声明王の眠りを驚かし」をとっさに思い浮かべて、「声、明王の眠りを驚かす」と朗吟。清少納言は その学才と機知に、思わず感嘆の声を上げている。
大納言藤原伊周様が、一条天皇に学問の講義をされると、
いつも徹夜になってしまうのどす。
あらら、皆はん、おさぼりの様子。(睡魔に襲われ、居眠り)
伊周様お一人、お張り切りで、
天皇様、お可哀想。(天皇も 眠くて仕方が無い)
夜が明けましたようでおます。・・・
(伊周)「いまさら、お休みあそばされなさるな」、
(天皇)「ムムム・・・」
しまった。よけいなこと申してしもうた。
あの様子をごらんなはれ。もう夜は明けたいうのに、
休まれてよろしもんややろか。ほんに・・・。
コケ~ッ!、コッケ コケ、ワン!、ワン!、ワン!
わっ!、ヒャッ!、わっ!、
何や!、何どす、何でおます、このいやみな騒ぎは。
ワン!、コケーッコ、ウーワン!、ケッコウ、
ヒャー、びっくりしたやわあ。どなたがこないな騒ぎ起こしたんでおます。
(童女)「ワテがつかまえたおんどりさんなのや!
朝になったら、里に連れて帰ろう思うて隠しとったのに・・・」、
(伊周)「声、明王の眠りを驚かす」、はっ!、漢詩の朗詠や。
(女房達)何やー、夜もようけ寝せへんで、犬やら鶏やら。
おまけに朝っぱらから、気取っておーけな声出しよってからに・・・。
しーっ!、大納言様のタフで知的な見せ場やわ。
(天皇)「不動明王もびっくり、目を覚ます・・・・。
まことタイミングのよい朗詠やった。ギャグのセンスも見事やで、大納言」、
そうや、そうや、パチ、パチ、パチ(拍手)
原文だよーん
長女(をさめ)が童(わらは)の、鶏(にわとり)をとらへ持て来て、
「あしたに里へ持て行かむ」と言ひて隠し置きたりける、いかがしけむ、
犬見つけて追ひければ、廊(らう)のまきに逃げ入りて、
恐ろしう鳴きののしるに、皆人(みなひと)、起きなどしぬなり。
上(うへ)もうち驚かせ給ひて、「いかでありつる鶏ぞ」など尋ねさせ給ふに、
大納言殿の、「声、明王の眠(ねぶ)りを驚かす」といふ言(こと)を、
高(たか)ううち出だし給へる、めでたうをかしきに、ただ人の眠(ねぶ)たかりつる目もいと大きになりぬ。
(注釈)
長女(をさめ)(下仕えの老女が使っている童女)が 鶏をつかまえて持ってきて、「翌朝里に持って行こう」と言って、隠して入れておいたのに、それがどうしたことか、犬が見つけて追いかけたので、廊の上の棚に逃げ込んで、恐ろしい程鳴き騒ぐので、女房達は皆、起きなどしたようだ。帝も目を覚ましなさって、「どうした鶏なのだ」などと尋ねあそばすと、大納言伊周様が すかさず、「声、明王の眠りを驚かす」という漢詩を、声高く吟詠なさったが、それが素晴らしく趣き深いので、明王ならぬ私の眠たかった目も、たいそう大きく開いてしまった。