映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

サイダー・ハウス・ルール

2007年05月01日 | 映画(さ行)

この作品にはちょっと思い入れがありまして。
というのは、
7年ほど前、ぼちぼち映画を見始めて、ただ、忘れてしまうのはもったいないと思い、記録を付け始めました。
その動機となった映画なのです。
今回、DVDで見直しまして、結構覚えてるシーンもあったのですが、それでもなお、多分、初めて見たときよりも感動したと思う。
トビー・マグワイヤは、今や、すっかりスパイダーマンで、人気となってしまいましたが、私はやはりこのような作品が彼の本領だと思います。

ラッセ・ハルストレム監督は、いつも家族とか、家がテーマのことが多いですよね。
ここでは、ホーマーの家は、孤児院。
まあ、普通の様々なストーリーでは孤児院は「家」にはなりえないのですが、この作品では、まさに、こここそが彼の家族の居る家なのです。
それは、彼がここを出るときのみんなの気落ちした様子、出てからも、彼を気遣う様子で如実に現れている。
でも、まず、子供は自立しなければなりません。
温かい家族の下を離れて、自分のルールで、自分の足で歩き始めなければならない。
だから、ホーマーにとっては、まず、自分の家を出ることが必要でした。
サイダーハウス・ルール、この題名の意味するところは、人に押し付けられたルールでなく、自分自身のルールでで考え、決めること、というこの映画のテーマそのものになっています。

外の世界は、彼自身にとってはさほど過酷というものではない。
黒人の季節労働者とともにりんごのジュースを作る仕事に付く。
そして、ある女性との恋。
彼女のフィアンセは戦争に行っていていない。
罪悪感に駆られながらも、愛し合う2人。
しかし、フィアンセが半身不随となって帰ってくることになった。
どうすればいい・・・。
このまま、成り行きを見ましょう・・・、彼女は言う。
けれども、何もしないで待っていても、問題を先延ばしにするだけ。
それは、彼自身、自分の将来を真剣に考えることを、成り行きに任せて先延ばしにしていた、そのことと同じだと、ここで気づくのです。
別れ、そして、自分の居るべき家への帰還。
そこで、医師となり、孤児たちの父として生きることを選択した結果でした。

孤児,望まれない子供,堕胎,近親相姦,戦争…。
この映画には悲惨な状況があふれるほど描かれています。
人の死すらも一人ではすみません。
けれど、その根底に、これらを見つめるなんともいえず優しい視点が感じられ、生きる事はそう悪くはないという気がしてきます。
まさに、名作。

1999年/アメリカ/126分

監督:ラッセ・ハルストレム
出演:トビー・マグワイヤ、シャーリーズ・セロン、デルロイ・リンド、ポール・ラッド

サイダー・ハウス・ルール
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角川映画