「砂の城の殺人」 谷原秋桜子 創元推理文庫
谷原秋桜子、「天使が開けた密室」、「龍の館の秘密」に続く3冊目。
今作は新作書下ろしです。
このシリーズは高校生美波が、いつも「武熊」さんに怪しげなバイトを押し付けられ、とんでもない事件に巻き込まれる、というパターンになっています。
今回は、廃墟専門カメラマンの撮影助手。
廃墟。
かつては人であふれた施設やテーマパーク。
それが、廃業などで放置されたまま、ほこりをかぶり、朽ち、崩壊寸前となっていく。
ただでさえ人気もなく、幽霊でも出そうだけれど、実際、湿気などで朽ちており、崩壊の危険があることなど、知らなかったことの説明もあって結構興味深く読めました。
とにかく人が入らない建物は急速に痛んでいくもののようです。
今回の事件現場は、放置されたままの、ある一軒家なのですが、そこで発見されたミイラ化した死体!
しかもそれはなぜか移動する!
次々に死んでいく関係者・・・。
この謎を、今回は、美波の友人直海がするすると解いていくように見えるのですが、実はそれは穴だらけの推理で、結局いつものように、大学生修矢が、最終的には解決に導くことになります。
「雪の山荘」的、閉ざされ、他の人の出入りの状況がない、つまり、犯人は必ずこの中に居る、という、ミステリの王道を行く、まさに、本格ミステリ。
ウ~ん、でも、正直言って、状況がちまちましすぎてて、ちょっとイライラしちゃったかな。
もっと、大胆な謎を、ばっさりと一刀両断で解き明かす、みたいな、そんなのが本当は好きなんだけどね。
表紙のイラストがかわいいので、つい、手が出て買ってしまったというシリーズでありました。