映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「Rのつく月には気をつけよう」 石持浅海

2010年10月10日 | 本(ミステリ)
のんべと食いしんぼには応えられない

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)
石持 浅海
祥伝社


          * * * * * * * *

お酒の瓶のイラストが心惹かれるこの本。
とてもおいしい一冊です。
学生時代からの飲み仲間、湯浅夏美、長江高明、熊井渚。
定番の飲み会は、ゲストを招き、
毎回おいしい肴とそれにぴったりのお酒で話が盛り上がります。
でもそこはミステリ作家ですから、何かしらのナゾが提起されるのです。
大丈夫、殺人事件はありません。
ここで解かれる日常のナゾは、男女の微妙な心の機微。
頭脳明晰、長江氏がゲストのほんの言葉の切れ端から、隠された真実を探り当てます。
だから、ちょっとうれしかったり悲しかったりするラブストーリーも楽しめますが、
なんと言っても、この本の楽しいのは、食べ物と飲み物。
では、ご紹介します。

生ガキとウィスキー。

チーズフォンデュと白ワイン。

豚の角煮と泡盛。

ぎんなんと日本酒。

そば粉のパンケーキとブランデー。

スモークサーモンとシャンパーニュ。

う~ん、どれもそそられますね。
ところがあと一つ、意外なものがあるんです。
それはチキンラーメンとビール。
チキンラーメンは、もちろんあの、インスタントラーメンで、しかもナマです。
袋ごとがんがんたたいて、細かくしてポリポリとそのままいただく。
まあ、なんてお手軽な!!
作中ではこのような記述がありますよ。

最初に感じたのは、口の中で麺が砕ける感触だった。
その次に塩気、油の味、そして強いスープの味が順に口の中に広がった。
スナック菓子というには味が強すぎる。
飲み込んで、そのままビールを飲んだ。
すると舌に残った塩分と油分をビールが流してくれて、
口の中にはスープの旨味だけが残った。


私、もの好きにも次の日、
チキンラーメンを買ってきて、さっそく試してしまいましたよ。
まあ、悪くはないですけどね。
でも、皆さん、わざわざ試すほどでもないかも・・・。
私はビールにはエダマメの方がいいです。

この中で、想像が付かないのが、
そば粉のパンケーキとブランデーというヤツ。
これこそ、試してみる価値はありそうですね。
ともかく、のんべと食いしんぼには応えられない本であります。

しかし、短編の連作であるこの本、それだけではないんですよね。
ある仕掛けが施されていまして、最後の話であっと驚かされます。
なんにしても楽しめました。

満足度★★★★☆