映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ATOM

2010年10月26日 | 映画(あ行)
ラララ科学の子



          * * * * * * * *

え~、鉄腕アトムには並々ならないこだわりがあります。
まさに私の子供時代の希望であり夢であったアトム。
国産初のテレビアニメは、食い入るように見ていました。
だからこそなんですが、このアメリカ産の面長のアトムには違和感があって、
公開時にはあえて見に行っていなかったのです。
でもまあ、気にはなりますので、この度ついに見てみました。


基本的な部分は、原作に忠実ですね。
といいますか、このアトム誕生のいきさつを
日本の「アトムファン」を自任する人でも、
知らない人が多いのは嘆かわしいと思っていました。
ほとんどの方は、お茶の水博士がアトムを作ったと思っていたのでは?
天馬博士が息子を事故で亡くし、
その代わりにその息子トビオそっくりのロボットを作ったのです。
ところが、ロボットはロボットでしかなく、生身の人間とは別物
・・・そう思い込んだ天馬博士は、ロボットのトビオを拒絶するようになる。


以上のコンセプトを守りながら語られるこのストーリーの世界観は、
この映画作品オリジナルのものです。
空中に浮かんだ都市。
ロボットはひたすら人間のために使役される。
壊れれば地上に捨てられておしまい。
その地上は、空中都市から振ってきたガラクタに覆われていて、
空中都市に住めない貧しい人間たちが蠢くように暮らしている。
壊れかけながらも、修復されたロボットたちもいる。
こういう二重構造の世界になっています。
また、このアトムのエネルギーになるのはブルーコアという、
宇宙で発見された未知のエネルギー。
アトムはトビーの記憶をそのまま持って誕生します。
心は人間。
体はロボット。
だからこそ、アトムはロボットと人間たちの間で揺れ動く。
手塚治虫氏の存命中にはアトムと天馬博士の和解は図れなかったわけですが、
今になってこのような結末をつけるのも、悪くはないかも知れません。




ところでこの作品、手塚治虫ファンを楽しませる部分が随所にありました。
ほんのワンシーン出てくるヒョウタンツギとか、
天馬博士の助手の一人が手塚氏そっくりだとか・・・。
地上にいたハム・エッグ氏は、始めそうとは思わなかったけれど、
やはりあのハム・エッグだ。
始めはいい人に思えたけどやっぱり悪役だ。
なるほどねー。

そうそう、この度は日本語吹き替え版を見たのですが、
原版での声の出演がタダモノではない。
フレディ・ハイモア、ニコラス・ケイジ、
ビル・ナイ、サミュエル・L・ジャクソン、シャーリーズ・セロン。
結構力が入っていたのですねえ。
それだけ、アメリカでも「アストロ・ボーイ」が親しまれていたのかと思うとうれしいです。
・・・ということで、
まあ、やはりアトムと呼ぶにはなじめない顔ですが、
私の知っているアトムとは別物の一つのストーリーとしてみれば
そこそこ面白かったかな・・・と。


ATOM スタンダード・エディション [DVD]
上戸彩,役所広司,フレディ・ハイモア,ニコラス・ケイジ,山寺宏一
角川映画



2009年/アメリカ・香港
監督:デビッド・バワーズ
原作:手塚治虫
声(日本語吹き替え):上戸彩、役所広司