映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「北の動物園」 倉本聰 

2010年10月15日 | 本(エッセイ)
雑多でユニークな体験が良い脚本を生む・・・?

北の動物園 (扶桑社文庫)
倉本 聰
扶桑社


         * * * * * * * *

脚本家、倉本聰氏のエッセイです。
これがもう、面白くて一気に読んでしまいます。
それというのも、氏の人間観察の鋭さもありますが、
なんと言っても著者自身のユニークな行動、発想、体験。
その魅力に引き込まれるという感じですね。


手術の話は壮絶です。
盲腸の手術の話。鼻の手術の話。
相当ぞっとさせられます。
よくぞまあ、これまでご無事で・・・。


ニセ倉本聰の話。
倉本聰を語ったその男は、実際旅館の部屋にこもりきりで、
せっせと原稿を書いていたという。
とんでもない奴という以前に、感心してしまう倉本氏。
日本海側各地を渡り歩き、旅館の人々をすっかりだまし通して
宿泊料を踏み倒し続けたニセ倉本氏。
・・・すごい話ですねえ・・・。


北海道人としては、氏の富良野塾のエピソードは非常に興味深いのですが、
そんな中であるエープリルフールの日、
塾生に『高倉健さんがお忍びで来るので、迎えに行くように』と言ったのはいいけれど、
その後そのウソを言ったことを忘れてしまい、
塾生は吹雪の中を3時間も健さんを待って凍えそうになったとか・・・。
4月1日に吹雪って、いえいえ、北海道ならそれはアリなんですよ・・。
翌日は誰も口をきいてくれなかったそうです。


スロープと間違えて車で階段を降りた話とか、
恋敵を蔵王のスロープの崖へ誘導してジャンプさせ、大けがをさせてしまった話とか・・・
やんちゃな方なのですねえ。
私などこれまでの一生の中でも、こんなおもしろい話はちっとも出てきやしない。
人の胸を打つストーリーは、本人の雑多な経験の中からうまれるのだなあ
・・・と感じ入る次第です。

こんなに楽しいエッセイ集はそう多くはありません。
オススメです。

満足度★★★★★