25年を経て、かいま見た瞳の奥の秘密

* * * * * * * *
2009年米アカデミー賞外国語映画賞受賞作品です。
舞台はアルゼンチン。
2000年、ブエノスアイレス。
刑事裁判所を退職したベンハミンは、
25年前に担当した未解決の殺人事件についての小説を書こうとします。
元上司の検事補イレーネと共に当時の捜査を振り返っていきます。
場面は現代と25年前が交互に描写されていきます。
この25年前の事件というのは、
自分自身の身の上を大きく変えた事件であり、
自分の中ではまだ終わっていない事件だった・・・。
それはある若い女性の強姦殺人事件。
その被害者の夫モラレスが見せるの妻への愛と、
犯人への憎しみの深さに、
ベンハミンは圧倒されます。
それで、真犯人を見つけるプロセスは、結構偶然性が高かったりもするのですが、
なかなか興味深い。
・・・ところが、苦労の末、せっかく捕まえた犯人が、すぐに釈放されてしまうのです。
それはその当時のアルゼンチンの政情と切り離して語ることはできません。
軍事政権が台頭し非常に不安定だったんですね。
反体制の動きに詳しいその犯人は、逆に当時の政府には有用な人物だった・・・
というのが何とも皮肉です。
何ともむなしい結果に終わってしまった後味の悪い事件。
そして、それはまた同時に、ベンハミンが密かにイレーネへ向けた思いの終末でもあった。

その後のベンハミンには、人生に敗れた・・・という感がずっとあったのでしょうね。
だから、退職を機にこの思いにも終止符を打とうと思ったのかも知れません。
ここまでは、単に感傷的な一人の男の回想であり、未練でもあるのですが・・・。
ところがラストで、私たちは驚愕の結末を見ます。
「瞳の奥の秘密」とは、実はここのところを指すのでしょう。
それは、事件から25年を経た現在のベンハミンが見つけた真実。
人の思いの深さ・・・
しかし、それは一歩誤ると狂気にも近い。
これは魂の死ではないのか・・・。
こんな25年間というのは・・・。
ストーリーは悲惨ではありますが、
所々ユーモアをにじませ、飽きさせません。
また、イレーネのたくましさにも救われます。
彼女が状況により部屋のドアを「開けて」おいたり、
「閉めて」おいたりする癖は、ラストに効いてくるんですね。
どこがどうとは言えないのですが、ハリウッド作品とは違う感触。
洗練はされていないけれど、派手でなく、地味でもなく・・・。
悲哀を描きながら根源は「陽」。
そしてたくましさがある。
まさに、お国柄をにじませています。
映画というものが持つ、また別の魅力を見つけたような気がします。
2009年/スペイン・アルゼンチン/129分
監督:ファン・ホゼ・カンパネッラ
出演:リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル、パブロ・ラゴ、ハビエル・ゴディノ

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2009年米アカデミー賞外国語映画賞受賞作品です。
舞台はアルゼンチン。
2000年、ブエノスアイレス。
刑事裁判所を退職したベンハミンは、
25年前に担当した未解決の殺人事件についての小説を書こうとします。
元上司の検事補イレーネと共に当時の捜査を振り返っていきます。
場面は現代と25年前が交互に描写されていきます。
この25年前の事件というのは、
自分自身の身の上を大きく変えた事件であり、
自分の中ではまだ終わっていない事件だった・・・。
それはある若い女性の強姦殺人事件。
その被害者の夫モラレスが見せるの妻への愛と、
犯人への憎しみの深さに、
ベンハミンは圧倒されます。
それで、真犯人を見つけるプロセスは、結構偶然性が高かったりもするのですが、
なかなか興味深い。
・・・ところが、苦労の末、せっかく捕まえた犯人が、すぐに釈放されてしまうのです。
それはその当時のアルゼンチンの政情と切り離して語ることはできません。
軍事政権が台頭し非常に不安定だったんですね。
反体制の動きに詳しいその犯人は、逆に当時の政府には有用な人物だった・・・
というのが何とも皮肉です。
何ともむなしい結果に終わってしまった後味の悪い事件。
そして、それはまた同時に、ベンハミンが密かにイレーネへ向けた思いの終末でもあった。

その後のベンハミンには、人生に敗れた・・・という感がずっとあったのでしょうね。
だから、退職を機にこの思いにも終止符を打とうと思ったのかも知れません。
ここまでは、単に感傷的な一人の男の回想であり、未練でもあるのですが・・・。
ところがラストで、私たちは驚愕の結末を見ます。
「瞳の奥の秘密」とは、実はここのところを指すのでしょう。
それは、事件から25年を経た現在のベンハミンが見つけた真実。
人の思いの深さ・・・
しかし、それは一歩誤ると狂気にも近い。
これは魂の死ではないのか・・・。
こんな25年間というのは・・・。
ストーリーは悲惨ではありますが、
所々ユーモアをにじませ、飽きさせません。
また、イレーネのたくましさにも救われます。
彼女が状況により部屋のドアを「開けて」おいたり、
「閉めて」おいたりする癖は、ラストに効いてくるんですね。
どこがどうとは言えないのですが、ハリウッド作品とは違う感触。
洗練はされていないけれど、派手でなく、地味でもなく・・・。
悲哀を描きながら根源は「陽」。
そしてたくましさがある。
まさに、お国柄をにじませています。
映画というものが持つ、また別の魅力を見つけたような気がします。
2009年/スペイン・アルゼンチン/129分
監督:ファン・ホゼ・カンパネッラ
出演:リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル、パブロ・ラゴ、ハビエル・ゴディノ