「プラチナデータ」 東野圭吾

最もディープな個人情報とは・・・

	プラチナデータ
	東野 圭吾
	幻冬舎

　　　　　　　　　　　　　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

近未来小説ですね。
神楽龍平。
彼は、DNA解析によって
血液型ばかりでなく、性別、年齢、およその体型から顔まで判明させるという
コンピュータプログラムの作成に関わっている。
このＤＮＡ解析によれば、犯罪現場に犯人の髪の毛一本でもあれば、
たちどころに、予想される顔写真までできてしまう。
また、全国民のDNAを登録することにより、その人物の特定はあっという間。
そこで、この作品上では、将来は100パーセントをめざし、
国民にDNAの登録を呼びかけている最中。
こうしてみるとDNAというのは最もディープな個人情報なんですね。
それがすべて国に管理されるというのは、やはりあまりいい気持ちがしません。
神楽龍平はしかし、このシステムの推進側であり、その未来を信じている。
でもこの男には、秘密があるのです。
彼にはもう一つの人格があって、ときおり彼と入れ替わることがある。
その人格は「リュウ」といい、彼が現れているときはひたすら絵を描いている。
手の絵。
または白い服を着た少女の絵。
そんな時、このDNA解析のプログラムを作った天才少女とその兄が
何物かに射殺されてしまう。
現場にあった毛髪のDNA解析が早速行われたが、
その結果はなんと神楽を犯人と示していた！！


そこから神楽の逃避行が始まるのですが、
果たして犯人は、もう一つの人格リュウなのか。
それとも・・・。

そこにはもっと大きな陰謀が隠されています。
不意に現れるスズランという少女もミステリアスですし、
最も親しみを感じる浅間刑事もいい感じ。
そしてなによりも意外な犯人！
近未来小説であり、SFでもあるこのストーリーですが、
やっぱりミステリなのでした。
そして最後の方で明かされる「プラチナデータ」の意味には愕然とさせられます。
国民はDNAでがんじがらめに管理し、
一方、管理する側には特典がある。
うう・・・、考えたくない社会ですね。
まあ、現状は戸籍すらきちんと管理仕切れていない程度なんで、
返ってそういう方が安心かも。
何だかそんな風に思えてきましたよ。
別に戸籍上200歳の人がいてもいいじゃありませんか。
生まれて直ぐにDNA登録され、すべてを管理されるよりは・・・。
もっとも、そうなったら、
どこぞの山中で発見された白骨死体も、即刻身元がわかりますね・・・。

スケールが大きなストーリー。
文明の進化のすえ、何もかもがコンピュータにより管理されるという
末恐ろしい近未来を描きながらでも、
やっぱり人にとって大切なモノはいつの世も変わらない・・・、
という納得の作品でした。

満足度★★★★☆