映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

2014年03月05日 | 映画(な行)
父親の人生を知る旅



* * * * * * * * * *


アメリカの田舎町が舞台のこの作品、
全編モノクロでひなびた味があって、
これもまたなかなかよいものです。


モンタナ州に住む頑固な老人ウディ(ブルース・ダーン)は、
100万ドルを進呈するという明らかに宣伝目的のインチキな手紙を信じ、
歩いてでもネブラスカのリンカーンへ行くと言ってききません。
しかしもう既に老いて、一人で歩くのもおぼつかないのです。
やむなく、息子のデイビッドが父を車に乗せて旅をすることに。



これまでウディは、家族思いであったことなどなく、大酒飲みで、
父と息子の関係も疎遠だったのです。
けれども、父がとにかく自分で納得する他ないだろうと
デイビッドは思ったのでしょうね。


さてところでネブラスカ州は父母の故郷であったのです。
せっかくなので故郷の街によって、親族と集まることに。
あまり口数が多くないウッディの兄弟たちも
皆、口が重くて、
全員集まってもじっと皆でテレビを見ているシーンなど、妙に可笑しみがありました。
そしてまた、街では旧友たちと出会ったりもします。
デイビッドは初めてここで父の若いころの話を耳にします。
ただ頑固で気むずかしくて付き合い難いと思っていた父親の人生を
ほんの少し垣間見るわけですが、
そこで彼はようやく父親を一人の人間として理解するのですね。


それにしても、ウディの100万ドルの話を本気にして
意地汚くたかろうとする親族・友人たち。
なんとあさましいこと・・・! 
お金は人格と人間関係を破壊します。
インチキでよかった~!!


ウディがあんなにも100万ドルにこだわったのは、
それがネブラスカだったからなのかもしれません。
もう老い先そう長くないことを自分ではわかっていて、
一度故郷に戻りたかった。
潜在的にそんな心理があったのかも、などと想像します。
そして、ここのお母さんはたくましくて好きです! 
夫を罵ることも多いのですが、
そこはソレで、やはり長年共に生活してきた阿吽の呼吸というものがある。


「少なくとも初めのうちだけでも、愛していたのでしょう?」

とデイビッドは父に聞くのですが、
父は「さあね」と、つれない。
いやいや、若いころのこの二人には、それなりのロマンスもあったはずなんですけどね。
それともやっぱり単なる成り行きなのか・・・?
それにしても、この息子デイビッドはちょっと出来過ぎなくらいにやさしい。
こんな人となら、結婚したほうがいいと思うんですけどねー、
出て行ってしまった、太めの彼女さん。


本作は例によって、父親と息子の確執の物語かといえば
ちょっと違う感じです。
通常は息子が父親の期待にそぐわずに、反発したり萎縮したりというパターンが多いですね。
こういう場合は、父親が本当の息子を知ることで歩み寄っていく。
でも本作は、大酒飲みで心を開こうとしない父親を
息子が理解し、受容していくのです。
遅すぎですが、でも間に合ってよかった・・・。
ピカピカのトラックを運転するお父さん、
カッコ良かったですね!!



「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」
2013年/アメリカ/115分
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキップ、ステイシー・キーチ、ボブ・オデンカーク
鄙びた度★★★★★
満足度★★★★★