こんな絵柄でなぜ泣ける???
* * * * * * * * * *
昨2013年、川原泉さんデビュー30周年ということでまとめられた傑作集です。
いやしかし、実は私、全作読んでいて、本もちゃんとあるはずなのですが、
それでもやはり買ってしまいました。
とにかく、カーラ教授こと川原泉さんが大好きなもので・・・。
冒頭を飾るのは、読者投票1位の「美貌の果実―10月はゆがんでいる」。
いや~、わかります。
ワタシもこれが一番好きかもしれない。
以前「約束の葡萄畑」という映画のブログで本作に触れたことがあります。
興味のある方はこちらをどうぞ。
→「約束の葡萄畑」
結局その時も「こんな映画よりカーラ教授の漫画のほうがずっといいよ」
と、いいたかったわけ。
葡萄の精が、ワイン造りに奮闘する母子を助けるという話。
登場人物は皆どこかぼんやりお気楽。
絵柄もその通り。
しかし、この絵でなぜこんなに泣けるのかと不思議に思えるくらいに、
見るたびに泣かされます。
今回カーラ教授をたっぷり読んで気がついたのは、
彼女の描く主人公の家庭には「欠損」が多いということ。
この「美貌の果実」では父親と兄が事故で亡くなっていますし、
「森には真理が落ちている」で亀になってしまう雪村さんには両親が居ない。
「空の食欲魔人」の弘文くんも両親をなくしているし、
「フロイト1/2」の梨生ちゃんも母親をなくして、目下叔父さん夫妻と同居。
しかし、彼、彼女らは普段はそういう翳りをみせません。
のんびりのほほんと目立たない。
だけれど、どうしようもなく健気で一生懸命で実直。
それは、彼女らの持つ「さみしさ」の裏返しなのだとわかってきます。
・・・だから頑張らなければ。
・・・だからちゃんとしなければ。
そういうところが、どうしようもなく私達の胸を揺さぶるのですねえ・・・。
「フロイト1/2」も、すごい作品ですよ。
夢を共有する男女の話。
"夢"と言っても将来を見据えたあり方ではなくて、
寝ている時に見る本当の「夢」の方です。
小学生と大学生だった二人は10年を経て再開。
お金のことしか考えられなくなってしまったゲーム会社社長の彼と、
そこでバイトをすることになった彼女。
RPGゲームの話を交え、心理学者のフロイトまで登場する、
深淵なのだかお茶の間向きなのだかよくわからない不思議な味わいのある一作。
そしてこれがまた何故か切なくて泣けるという。
カーラ教授をご存じない方にも、以前からのファンにも
おあつらえ向きの珠玉の一冊。
「Ⅱ」に続きます。
「ワタシの川原泉Ⅰ」川原泉 白泉社
満足度★★★★☆
川原泉傑作集 ワタシの川原泉I (花とゆめCOMICSスペシャル) | |
川原泉 | |
白泉社 |
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昨2013年、川原泉さんデビュー30周年ということでまとめられた傑作集です。
いやしかし、実は私、全作読んでいて、本もちゃんとあるはずなのですが、
それでもやはり買ってしまいました。
とにかく、カーラ教授こと川原泉さんが大好きなもので・・・。
冒頭を飾るのは、読者投票1位の「美貌の果実―10月はゆがんでいる」。
いや~、わかります。
ワタシもこれが一番好きかもしれない。
以前「約束の葡萄畑」という映画のブログで本作に触れたことがあります。
興味のある方はこちらをどうぞ。
→「約束の葡萄畑」
結局その時も「こんな映画よりカーラ教授の漫画のほうがずっといいよ」
と、いいたかったわけ。
葡萄の精が、ワイン造りに奮闘する母子を助けるという話。
登場人物は皆どこかぼんやりお気楽。
絵柄もその通り。
しかし、この絵でなぜこんなに泣けるのかと不思議に思えるくらいに、
見るたびに泣かされます。
今回カーラ教授をたっぷり読んで気がついたのは、
彼女の描く主人公の家庭には「欠損」が多いということ。
この「美貌の果実」では父親と兄が事故で亡くなっていますし、
「森には真理が落ちている」で亀になってしまう雪村さんには両親が居ない。
「空の食欲魔人」の弘文くんも両親をなくしているし、
「フロイト1/2」の梨生ちゃんも母親をなくして、目下叔父さん夫妻と同居。
しかし、彼、彼女らは普段はそういう翳りをみせません。
のんびりのほほんと目立たない。
だけれど、どうしようもなく健気で一生懸命で実直。
それは、彼女らの持つ「さみしさ」の裏返しなのだとわかってきます。
・・・だから頑張らなければ。
・・・だからちゃんとしなければ。
そういうところが、どうしようもなく私達の胸を揺さぶるのですねえ・・・。
「フロイト1/2」も、すごい作品ですよ。
夢を共有する男女の話。
"夢"と言っても将来を見据えたあり方ではなくて、
寝ている時に見る本当の「夢」の方です。
小学生と大学生だった二人は10年を経て再開。
お金のことしか考えられなくなってしまったゲーム会社社長の彼と、
そこでバイトをすることになった彼女。
RPGゲームの話を交え、心理学者のフロイトまで登場する、
深淵なのだかお茶の間向きなのだかよくわからない不思議な味わいのある一作。
そしてこれがまた何故か切なくて泣けるという。
カーラ教授をご存じない方にも、以前からのファンにも
おあつらえ向きの珠玉の一冊。
「Ⅱ」に続きます。
「ワタシの川原泉Ⅰ」川原泉 白泉社
満足度★★★★☆