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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

メッセンジャー

2014年03月27日 | 映画(ま行)
戦闘シーンのない戦争映画



* * * * * * * * * *

アメリカの映画でよくあるシーン。
ある日、戸を叩く二人の正装の軍人。
戸口に立つ二人は、夫の、あるいは息子の戦死を告げに来た。
まさに不吉の予兆の二人なのですが、
本作はこの、戦死した兵士の遺族に訃報を伝える通告官・メッセンジャーに焦点を当てています。



イラク戦争で負傷し、帰国した米軍兵のウィル(ベン・フォスター)は、
上官であるトニー・ストーン大尉(ウッディ・ハレルソン)とともに
メッセンジャーの任務につきます。
遺族たちの悲嘆や怒りをまともに浴びるこの仕事に、心は沈み込むばかり。
ウィルは戦争で受けた傷もすっかり癒えてはいないのですが、
それ以上に心に受けた傷を抱えている。
帰国してみれば恋人は他の男に奪われ、
おまけに就いた仕事がこれ。
ということでなかなか悲惨なのですねえ・・・。
しかし、自暴自棄にもならず淡々とした佇まいなのが、いいと思う。
内省的というか、決して激さず言葉少な。
こういう雰囲気は日本人の好みかもしれません。
とはいえ、やはり何かほのかなぬくもりとか優しさを
無意識のうちにも求めていたのでしょう。
夫が戦死し未亡人となったオリビアに惹かれていくのです。



さて一方、本作はこの上官トニーの心情にも触れていきます。
彼もまたこのような仕事で平常でいられるのかといえば、そうではない。
彼はアルコール依存症となってしまっています。
しかし、ウィルと組むようになってから、彼もまた変わっていく。



実に何気なく行っているような「告知」という仕事も
実は色々と制約や決まり事があることを知りました。
新聞やテレビのニュースに載るよりも早く遺族に告知をしなければならない。
そのため常にポケベルを携帯し、呼び出しに応じなければなりません。
家の前まで車を乗り付けない。
ドアのチャイムは鳴らさず、ノックをする。
告げる相手は最近親者のみ。
そして最近親者に触れてはならない。
等など・・・



そうまで配慮しても、遺族には忌み嫌われ、
つばを吐きかけられたり、殴られたり。
そのため心を病んでいくなどといえば、
やはりこれも戦争の犠牲の一つではあるのです。
戦闘シーンはないけれど、これも一つの戦争映画なのでしょう。
私達に戦争の虚しさをじっくりと訴えかけています。



メッセンジャー [DVD]
ベン・フォスター,ウディ・ハレルソン,サマンサ・モートン,スティーヴ・ブシェーミ
アミューズソフトエンタテインメント


「メッセンジャー」
2009年/アメリカ/112分
監督:オーレン・ムーバーマン
出演:ベン・フォスター、ウッディ・ハレルソン、サマンサ・モートン、ジェナ・マローン、スティーブ・ブシェーミ