映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

手紙

2014年03月31日 | 映画(た行)
兄弟の絆、友情の絆、人と人との絆



* * * * * * * * * *


東野圭吾原作のこのストーリー、
多分「原作を読んだからいいや」ということで、見ていなかったと思うのですが、
ご多分にもれず、ストーリーはすっかり忘れていたので、十分楽しめました。


強盗殺人の罪で刑務所に服役中の兄(玉山鉄二)を持つ、直貴(山田孝之)。
兄は、弟の学費のために強盗に入り、
誤って人を殺してしまったのです。
しかし直貴は、その兄のために、
夢も諦め、職も点々とせざるを得ないこれまでの日々。
そして更には愛する女性との幸せまでもが崩れていく・・・。
ひたすら人恋しくて刑務所からせっせと手紙を送りよこす兄と、
直貴は絶縁を決心するのですが・・・。


罪を犯したのは本人の責任であるはずが、
まるで家族までもが罪人のように世間から爪弾きにされていくのが、
なんとも理不尽で切なくなります。
でも本作中で、ある人物が「それは当然だ」といいますね。
「一般の人は犯罪から遠ざかろうとするものだ」と。
だけれども、ここから始めるんだ。
少しずつ周りの人とつながっていけばいい・・・と。



直貴はこれまで、少しでも兄のことを気づかれると、
そこを去るという生活を繰り返してきていたのです。
けれども、そうやっていつも逃げ出すのではなく、
しばし踏みとどまって耐えてみてはどうか、というのですね。
彼を本当に知る人たちは、
お兄さんのことを聞いても彼への信頼を揺るがしたりはしません。
彼の友人・祐輔(尾上寛之)や、由美子(沢尻エリカ)は、
むしろ積極的に力になってくれます。
世間の人々の冷淡さと同時にまた、
人と人とのつながりの大事さをも訴えているわけですが、
直貴にはこのように支えてくれる人が居て・・・。
しかし刑務所の兄は・・・ということで、
これは実に人と人との絆の物語。


ラスト、刑務所のシーンですが、バックに流れる小田和正。
これは反則でしょ~。
絶対に涙腺がゆるみます。
やられます。


うーん、でもどうしても違和感なのが、
見るからに寡黙そうなこの直貴くんが目指していたのが
“お笑い”の道というところでしょうか。
確かに、いつもバカばっかりやっている人がお笑いに向くというわけではないのはわかるのですが・・・。
刑務所に慰問に行くという結論ありきのため・・・
ということになっちゃいますかねえ。


約10年前の作品で、ちょっと驚いたのが沢尻エリカさん。
健気で可愛らしくて・・・。
今のイメージとは全然違う。
まあ、健気でかわいい女優さんはそこらにいくらでもいるので、
個性的な方向へ芽を伸ばしてきたというわけですね。
いやいや、女優なのですから、今だって多分そのような役だって完璧にこなすでしょう。
そういう役がつくかどうかは別として・・・。

手紙 スタンダード版 [DVD]
山田孝之,玉山鉄二,沢尻エリカ,吹石一恵,尾上寛之
日活


「手紙」
2006年/日本/121分
監督:生野慈朗
原作:東野圭吾
出演:山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵、尾上寛之

落涙度★★★★☆
満足度★★★☆☆