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「最後のおでん ああ無情の泥酔日記」 北大路公子

2015年02月02日 | 本(エッセイ)
ダラダラのようで、実は鋭いキミコさん

最後のおでん: ああ無情の泥酔日記 (新潮文庫)
北大路 公子
新潮社


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おでんを食べ続けているうちに三日もたっていた。
理由はわからない。
それは、二〇人前も作ったからや!
見通しが甘く、意志は弱く、やすやすと酒に溺れる独身フリーライターが、
サボりながらも継続してきた日記。
だが、ここにはきっとあなたの人生にとって
大切なことが書かれている(かもしれない)。
全国の酔っ払い女子たちの圧倒的共感を期待して堂々刊行。
キミコの扉は夜開く。

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「枕もとに靴」に次ぐ北大路公子さんの泥酔日記。
約10年ほど前にネットに公開された日記なのだそうですが、
その頃これを目にしていたら、私もきっとファンになっていたと思います。
本巻解説の大矢博子さんは
「最近のキミコさんは発信場所をツイッターに移しているが、
ここに書かれている10年前の日々と、
ツイッターで語られる最近の日々が、もう何の変化もない」とおっしゃっています。
いや、その変わらなさがいいんですよね・・・。
酔って財布をなくしても、
どこでどうなってそうなったものやら何も記憶がないという・・・、
そこまでの酔い方を私はしたことがないのですが、
そこまでの自己開放、ちょっと気持ちがよさそう。
でも翌日の具合の悪さもかなりなのではないかと思うと、
やはりマネはできません・・・。


前巻「枕もとに靴」にあったような、
幻想的かつ情緒的な掌編のようなもの・・・は、
かなり鳴りを潜めていいます。
それでも、キミコさんの文章は、
ただだらだらと思いついたことを書き連ねているわけではなくて、
読ませるようにしっかり計算されているなあ・・・と
いまさらですが気づきました。


例えば、「なんで」というところでは、
5月というのに車にまだ冬用のワイパーを付けたままのキミコさん、
「夏用のワイパーを買わなくちゃ」とヤギ氏に言えば
「なんで」と彼は怒ったように言う。
どうしてそんな風に言われるのかわからないキミコさん。
そのココロは最後の最後に明かされる。


酔って財布をなくして友人たちにさんざん迷惑をかけたキミコさん。
ある日その友人の家に招かれ、そのためのビールなどを一緒に買うことに。
普段迷惑をかけているのでここはキミコさんが支払いをしようと思ったのですが、
その時の友人のひとこと。
これが面白いのですが、
なんとその先の彼女のおまけのひとことがまた効いている。
しっかり起承転結になっていて、ひねりもあり、
だからついやめられずにどんどん読んでしまうのですよね。
ライターとして、確かに優秀な方です。
そこのところは、尊敬します。

「最後のおでん ああ無情の泥酔日記」北大路公子 新潮文庫
満足度★★★★☆