映画と本の『たんぽぽ館』

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「赤猫異聞」浅田次郎

2015年02月18日 | 本(その他)
彼らは本当に戻ってくるのか・・・?

赤猫異聞 (新潮文庫)
浅田 次郎
新潮社


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時は、明治元年暮。
火の手の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人たち―
博奕打ちの信州無宿繁松、
旗本の倅岩瀬七之丞、
夜鷹の元締め白魚のお仙。
牢屋同心の
「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」
との言葉を胸に、自由の身となった三人の向う先には…。
幕末から明治へ、激動の時代をいかに生きるかを描いた、傑作時代長編。


* * * * * * * * * *

本作、題名の「赤猫」というのは、残念ですが(?)ネコとは関係なくて、
近隣の火事の際に牢に入れられた罪人たちが、
危険を避けるために一時解き放たれることをいいます。
定められた時までに戻れば刑を軽くし、
戻らない場合は、どこまでも探し出して死罪。
火事と喧嘩は江戸の花・・・などといいますが、
こんな「赤猫」という風習も、
はたで見るからには、お祭り騒ぎのようなものだったかも。
さて、時代は明治元年。
幕府は解体され、明治の新政府は起こったものの、
実際のお役所の現場は混乱状態。
この監獄といいますか牢屋敷の運営も、
上層部から何の指図もないままに江戸の体制そのままに行われていたのです。
この時の火事がいたずらに大きくなってしまったのも、
江戸の火消しの組織がきちんと機能していなかったため・・・。
う~ん、時代背景だけ見るにも、すごく興味深いです。


物語にはこの解き放たれた中でも特にワケありの重罪人である三人、
博奕打ちの信州無宿繁松、
旗本の倅岩瀬七之丞、
夜鷹の元締め白魚のお仙のことが語られています。
彼らはそれぞれ胸に秘めた思いがあり、
この解き放たれた時を幸い、どうしてもやらなければならないことがあった。
「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」と言われ、
解き放たれた3人は果たして戻ってくるのや否や。
これが大きな山場なのですが、
実はその影にまた大きな秘密が隠されているのです。
実はこの三人の解き放しを提案した役人は
「彼らが一人も戻らなかった時には切腹をする」
ことになっていたのです。
そういうこの人物がとった行動がまた、実に意外。


なんてドラマチックなストーリーなんでしょ。
さすがの浅田次郎作品。
・・・これ、映画で是非みたいです!!

「赤猫異聞」浅田次郎 新潮文庫
満足度★★★★★