映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マエストロ!

2015年02月09日 | 映画(ま行)
心がひとつになった時、音楽もひとつになって



* * * * * * * * * *

さそうあきらさんのコミックが原作。
音楽モノは何といっても、
コミックではどうしても味わえない本物の音楽があるのがうれしいですね。


不況のアオリで解散した名門コーケストラが再結成するということで、
メンバーが久々に集められました。
しかし、練習場は廃工場。
集まったのは再就職先も決まらない「負け組」の楽団員たち。
そして、再結成を企画したのは、
これまで全く無名の指揮者、天道(西田敏行)。

彼は指揮棒の代わりに大工道具を振り回し、
ミスや技術の足りないところをもクソミソに指摘。
団員たちは不安と敵意をつのらせますが、
次第に天道の創りだす音楽の世界に引きこまれています。
さてしかし、才能ある若きヴァイオリニストでコンマスの香坂(松坂桃李)は、
天道の過去を知り、反発を強めていくのです・・・。



バラバラだった音楽がひとつになるのは、なんて心地よいのでしょう。
以前「のだめ」で味わったような感動が再び蘇りました。
本作で登場するのはベートーベンの「運命」。
そして、シューベルトの「未完成」。
交響曲5番「運命」の出だしはあまりにも有名ですが、
あの出だしは「ジャジャジャジャーン」ではなくて、
本当は休符から始まる「ンジャジャジャジャーン」だなんてこと、
知るよしもありませんでしたが、面白いものですねえ。



天道が、借金をして返済に苦しみながらも、本当にやりたかったこと。
それが涙を誘います。
脳天気そうに見えるあまね(miwa)も、大変な過去を抱えていた。
そういうことからすると、香坂はなんと恵まれていることか。
きっと彼はそういうことにも気づいていったのだろうと思います。



彼らが最後に聞いた(と思った)天籟・・・
これは多分、この映画よりも、
原作コミックのほうが私たちにも「聞こえる」のではないかな・・・と思いました。
いえ、原作を読んだわけではないのですが、
こういうところ、漫画家さんの表現力は素晴らしいですからね。
私、冒頭で「映画のほうが音があっていい」などと書きましたが、
現実の音では表すことができない何かを、
時にはコミックのほうが明確に私達の心に響かせる、
そんなこともあるものです。
原作の方を確かめてみたくなってきました。



いやしかし待てよ、
本作の脚本は奥寺佐渡子さんじゃありませんか! 
私は「八日目の蝉」の脚本に痛く感動したんですよね。
原作も良かったけれど、まさに映画化のために思い切った構成の再編成をしていて。
だから原作を読んでいてさえも、さらにまた感動したという稀有な作品でした。
となれば本作も、どう原作を切り崩して再構築したのか・・・
など確かめてみたい気もします。


若き日に、指揮者の道を挫折してしまった天道氏は
大工で生計を立てていたのでしょうか?
・・・これでオケ再結成の曲が「第九」だったら、笑えたかも。
それこそ、トンカチの指揮棒で。
(バカなこと考えてしまった!!)


「マエストロ!」
2015年/日本/129分
監督:小林聖太郎
原作:さそうあきら
脚本:奥寺佐渡子
出演:松坂桃李、miwa、西田敏行、古館寛治、大石吾朗、松重豊

オーケストラの楽しみ度★★★★☆
満足度★★★★☆