映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

コーヒーをめぐる冒険

2015年02月05日 | 映画(か行)
人生のツケが回ってきたついてない一日



* * * * * * * * * *

舞台はベルリン。
しっかり現代の話ですが、モノクロ。
でもこれがすごくいい味になっています。


ニコ(トム・シリング)は、2年前に大学を中退し、
自堕落な毎日を送っています。
その日の朝、彼女が入れるコーヒーを飲み損ねてから、
調子が狂いっぱなし。
様々な人、様々な出来事に遭遇します。
車の免許が停止され、
同じアパートの住人に絡まれ、
父に退学がバレて送金を絶たれ・・・。
そして、面白いのは何故かこの日、
ずっと彼はコーヒーを飲むことができないのです。
決してコーヒーを飲むためにあちこち駆けずり回ったりはしないのですよ。
でも、ちょっと一息入れてコーヒーでも・・・という時はあります。
そんな時に何故かお金を持っていなかったり、
店のコーヒーが切れていたり、
自販機が故障していたり、
ポットがたまたま空だったり・・・。
水やお酒はあるのに、
何故かコーヒーだけは飲むことができない。
ニコにとって踏んだり蹴ったりのことばかりが起こるこの日は、
けれども彼のこれまでの人生のツケが
一気に回ってきただけのようにも思えるのです。
コーヒーにありつけないのがその象徴とでも言うように。



この構成には唸らされてしまいますね。
このコーヒーのくだりがなければ、
どこにでもある青春ドラマになってしまうところです。
けれど本作、ニコの困った状況を描写するだけではありません。
そこにはまた、出会ったいろいろの人たちの人生ドラマがあるのです。
時にはある友人のおばあちゃんに、ほんの束の間、癒やされたりもして。



この一日の結末というか仕上げもまた、普通ではありません。
決してハッピー・エンドではない。
けれども、きっと次の日からニコは変わっていくだろうなあ・・・と思わせますね。
本作、2013年ドイツアカデミー賞主要6冠を制覇。
それも納得でした!!



トム・シリング、いいですねえ・・・。
すっかりファンになってしまいました。

コーヒーをめぐる冒険 [DVD]
トム・シリング,フリデリーケ・ケンプター,マルク・ホーゼマン,カタリーナ・シュットラー,ミヒャエル・グヴィスデク
ポニーキャニオン


「コーヒーをめぐる冒険」
2012年/ドイツ/85分
監督・脚本:ヤン・オーレ・ゲルスター
出演:トム・シリング、マルク・ホーゼマン、フリーデリッケ・ケンプター、ユストゥス・フォン・ドーナニー、ウルリッヒ・ノエテン

不運度★★★★☆
満足度★★★★★