映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

素粒子

2015年04月27日 | 映画(さ行)
性欲が、男性をいっそう孤独にする



* * * * * * * * * *

母親に捨てられた異父兄弟の、
それぞれの愛と性を描いています。


セックス依存症気味の文学教師ブルーノ(モーリッツ・ブライブトロイ)。
そして、遺伝子の研究をしている天才的な科学者だけれど、
女性関係にはひどく消極的なミヒャエル(クリスティアン・ウルメン)。
二人の母親は自由奔放で、この二人をそれぞれ父方の祖父母に預けてヒッピー生活をしていたのです。
両親からの愛をしっかり受けて育たなかったためか、
双方、愛や性についての認識がどこかゆがんでいながらも、
人並み以上の渇望があるように見受けられます。
初めのほうでブルーノのクラスの生徒がいみじくも言っていました。
「性欲が、男性をいっそう孤独にする」と。


やがて、双方真に愛すべき人と出会うのですが・・・。



やや精神に変調をきたしているブルーノ役の
モーリッツ・ブライブトロイが素晴らしかった。
最近のドイツ映画には欠かせない俳優さんですね。
そもそも本作は、先に見た「コーヒーをめぐる冒険」のトム・シリングが見たくて視聴した作品なのですが、
残念ながらそのトム・シリングの出番は少なく(ミヒャエルの少年時代なので)、
しかし素晴らしいモーリッツ・ブライブトロイを見ることができたので、
思わぬ拾いものをした感じです。


最後に、ある重要な決断の必要性に迫られるブルーノは、
情けなくも迷いに迷い逡巡するのですが、
そのことから大きな悲劇が・・・。
現実問題として、それは無理もないことだし、恋愛は綺麗事では語れない。
ブルーノ自身も私達もわかってはいるのだけれど・・・、
でもそこで迷ってしまうのはやっぱりナシだよと、
どこかで夢見る自分が語りかける。
自分でも受け入れることができない「後悔」がブルーノを変える・・・。
もしかするとこれが永遠に実体験としての『性』を手放し、
精神のみの愛へと昇華していくことなのかもしれない・・・などと思いながら。


「素粒子」
2006年/ドイツ/113分
監督:オスカー・レーラー
原作:ミシェル・ウェルベック
出演:モーリッツ・ブライブトロイ、フランカ・ポテンテ、マルティナ・ゲデック、クリスティアン・ウルメン、ニーナ・ホス、トム・シリング
愛と性を考える度★★★★☆
満足度★★★☆☆