映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ピエロがお前を嘲笑う

2016年03月15日 | 映画(は行)
オレは人間をハッキングするんだ



* * * * * * * * * *

並外れたコンピュータ言語能力を持つベンヤミン(トム・シリング)が、
クレイジーなハッカー集団のチームに加わり「CLAY」と名乗るようになります。
だから、私には実のところはよくわからない
サイバー犯罪についてのあれこれのストーリーかと思っていました。
ハッキング技術を駆使して、何やら窮地に陥ったのち大逆転・・・?
イヤイヤ、もちろんそれもあるのですが、
実は生身の人間の「心」の隙間を付く、逆転劇なのでした。
CLAYは、ハッキングによりネット上を盛り上げるのですが
しかし彼らのそのような行為が利用されて、殺人事件が発生。
彼らが犯人にされてしまうのです。



冒頭はこんなシーンから。
ベンヤミンは自ら出頭し、連邦情報局捜査官(トリーネ・ディアホルム)に、
事の仔細を話し始める。



「自分は、子供の頃から人に注目されない透明人間のような存在だった。
父はおらず母は自殺。
こんな、さえない自分が、ある時おかしな3人組と出会って・・・」

つまり彼が語ることが本作のストーリーなのですが、
実はこういう作りこそが私たちを陥れる罠なのでした。



ラストに思わぬ真相(?)が現れ、ボー然とさせられてしまうのですが、
しかし・・・!!
「CLAY」のリーダー的存在、マックス(エリアス・ムバレク)が言っていましたねえ。
俺は人間をハッキングするんだ、と。
最後まで見て、なるほど・・・と思いました。
確かに、彼らに嘲笑われても仕方ない。
完敗です!!




「コーヒーをめぐる冒険」で現代青年の繊細な存在感を示したトム・シリングが、
ここでもいい味を出していました。
情報局の捜査官役の女性を、割と最近見たけど、誰だっけ??と、
ずっと思い出せずに見ていたのですが、
トリーネ・ディアホルム、「愛さえあれば」で、
ビビッドカラーのカーディガンとワンピースのよく似合う、あの彼女でした。
さすが女優さん。
役柄でイメージも変わるものですね。
でもあのチャーミングな目元が同じ!!


ところで、本作はすでにハリウッドでリメイクが決定しているのだそうです。
トム・シリングがこんなに好演の本作を、
な~んでわざわざ作りなおすのか、全然意味がわかりません。
アメリカ人はよほど字幕が嫌いのようですが、
ドイツ語を英語に吹替すればいいだけなのでは。
ハリウッド映画を日本語の吹き替えにするよりよほど自然で違和感もないと思うけど・・・。


「ピエロがお前を嘲笑う」
2014年/ドイツ/106分
監督:バラン・ボー・オダー
出演:トム・シリング、エリアス・ムバレク、ボータン・ビルケ・メーリング、ハンナ・ヘルツシュプルンク、トリーネ・ディアホルム

逆転度★★★★★
トム・シリングの魅力度★★★★☆
満足度★★★★★