映画と本の『たんぽぽ館』

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不屈の男 アンブロークン

2016年03月23日 | 映画(は行)
ひたすら圧倒される



* * * * * * * * * *

アンジェリーナ・ジョリーの監督第2作目作品。
脚本がジョエル&イーサン・コーエンということもあって、
ただならぬ迫力のある作品となっています。



1936年のベルリン・オリンピック、陸上競技に出場し、
二次大戦中に日本軍の捕虜となった米軍パイロット、ルイ・ザンペリーニの実話です。
なにしろ彼の過酷な運命に圧倒されてしまうのです。
オリンピック出場後に、彼は兵役についたのですね。

しかしある時、飛行機の故障で海に墜落。
2人の仲間とともにゴムボートで海上を漂流することになってしまいます。
ほんの僅かな食料と水・・・。
時には荒れ狂う波。
結局47日間。
この内の一人は力尽きて途中で亡くなってしまいます。
こういう時はひたすら生きようとする気力がものを言うのだろうと思います。



さてところが、瀕死のところをようやく大きな船と遭遇し救い上げられたのですが、
なんとそれは日本軍の船。
どこか(?)南洋の島でしばし過ごした後、
東京の捕虜収容所に送られます。
それでも生死が紙一重の海上よりはまし・・・なはずでしたが、
ここにとんでもないサディスティックな日本人伍長が登場します。
彼はオリンピックに出場したというルイを目の敵にして、
ワケもなく彼を痛めつけます。
イジメです。



日本人兵士が意味もなく米軍捕虜を傷めつけるという話は
これまでにもありました。
まあ、日本人として見るのは辛いのですが・・・。
しかし本作はそういう日本そのものを敵視しているわけではありません。
ひたすらこのワタナベ伍長というクレイジーがかった「個」の問題にしているので、
意外とすんなり見ることができました。
このクレイジーな伍長のところが、いかにもイーサン兄弟だなあ・・・と思う次第。
一旦ワタナベは昇進したとしてこの収容所を離れるのですが、
その後捕虜が移送され、再びの対面!!となってしまうのです。
ここのところは絶対にワタナベの故意ですよね。
わ~、嫌なやつ!!
いやいや、ルイはよくぞこれで生きて帰ることができた・・・。
飛行場に出迎えた家族とルイの対面のシーンには本当に安堵してしまいました。
まさに、不屈の男!!



それにしてもワタナベがすごかった。
これがいかにもいかつい鬼瓦みたいな顔をした男かといえば、
全然そうじゃなんですよ。
ちょっと女性的なキレイな顔立ちというところが、
いかにもコワイじゃありませんか。
この人、何者??と思いましたが、
MIYAVIさんというミュージシャンだそうで、
私は全然知らなかったのですが、この配役は凄いと思う。



これもまた、フィクションであれば、そんなバカなと思うところかもしれません。
事実には力がある。
圧倒されました。


はじめの方で戦闘機の空中戦シーンがあったのですが、
ここでは米軍機の機内の様子も迫力を持って描かれています。
銃弾が機内まで突き抜けてくる。
こんなシーンを見たのは初めて。
そもそも日本の零戦などでは、パイロットは座席から身動きできないけれど、
米軍機はでかいのだなあ・・・。
とにかくこれもまた圧倒的なスリルに満ちています。
この時に機が墜落するのかとおもいきや、
その時は無事基地に帰り着き・・・というストーリーもなかなか虚をついていました!

「不屈の男 アンブロークン」
2014年/アメリカ/137分
監督:アンジェリーナ・ジョリー
脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:ジャック・オコンネル、MIYAVI、ドーナル・グリーソン、ギャレット・ヘドランド、フィン・ウィットロック
不屈度★★★★★★!
鬼気迫るイジメ度★★★★★
満足度★★★★★