映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

トゥ・ザ・ワンダー

2016年03月07日 | 映画(た行)
詩的に描かれる、愛と孤独



* * * * * * * * * *

パリに住むシングルマザー、マリーナ(オルガ・キュリレンコ)は
モン・サン・ミッシェルで、
アメリカから来たニール(ベン・アフレック)と出会い、情熱的な恋に落ちます。
ニールに誘われた母子は、アメリカに渡り
オクラホマ州の小さな町で暮らし始めます。
しかし、幸福感に満ちた時は短く、次第に情熱は失われていく。
ニールは幼なじみのジェーンに心惹かれ始めるのですが・・・。



このように書くと、どこにでもありそうなラブ・ストーリーなのですが、
本作は全然「ラブ・ストーリー」というイメージとはかけ離れています。
登場人物一人ひとりのモノローグで、状況が語られていきます。
日々の彼らの日常を写し出していきながらどこか詩的。
モン・サン・ミッシェルの情景がステキでしたね。
こんなところで出逢えば、確かにロマンスは生まれそう。
さてしかし、マリーナは、
ニールを愛すれば愛するほど孤独を深めていくようにも思えるのです。
それは、至福の時は確かにあるけれども、それでもやはり人は結局は一人なのだ・・・
という真理に気づいているからなのかもしれません。
二人の間にできてしまった隙間を埋めるかのように、
他の人をまた求めてしまう・・・。



ベン・アフレックがベン・アフレックに見えないくらいに、
ここではオーラを消しているような感じ。
あえて顔のない“男”として描かれているようです。
だから、彼はやはり通り過ぎていく男なのだろうな。
消えゆく愛・ロマンへの挽歌というにふさわしい作品です。



しかし、現実的には私は思うのですが、
マリーナは仕事を持つべきだったのですよ。
常にニールへの愛だの恋だの思いつめてるからこうなる。
もっと、ちゃんと生活しなよ! 
そうすれば他の人達との繋がりもできてくるのに。
ま、そんなことになったら本作は成り立ちませんが。



「トゥ・ザ・ワンダー」
2012年/アメリカ/112分
監督:テレンス・マリック
出演:ベン・アフレック、オルガ・キュリレンコ、レイチェル・マクアダムス、ハビエル・バルデム
ロマンス度★★★★☆
満足度★★.5