映画と本の『たんぽぽ館』

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グローリー 明日への行進

2016年03月21日 | 映画(か行)
公民権運動をもっと知らなければ・・・!



* * * * * * * * * *

アメリカ、公民権運動の中で、特に語られることの多い
「血の日曜日事件」を中心に、
キング牧師のことが描かれています。
私は勉強不足で、あの有名な演説と公民権運動に力を尽くした方、
ということくらいしかキング牧師のことは知らなかったので、
本作で語られるキング牧師の具体像に、痛く感動してしまいました。



1965年3月7日。
アラバマ州セルマで黒人の有権者登録の妨害に抗議する
600人のデモが行われました。
憲法では、黒人の投票権は認められています。
けれども、州にもよるようですが、
黒人は「有権者登録」をしなければ、投票権は認められないのです。
しかしその「有権者登録」というのがものすごく制約が多くて、
それを獲得できる人はマレ。
奴隷解放から100年を経てもまだこんな状況だったのですね・・・。

だから権利を主張する黒人たちというのは
そりゃ、当然だ!!と今は思えるのですが、
でも当時のアメリカは全然違ったのです。
白人知事の率いる警官隊は武力でデモを鎮圧。
でもそれは「鎮圧」などという生易しいものではない。
警官が、逃げ惑う黒人たちをまるで「狩り」のように追い立てて、
暴行を加え、傷つける。
しかし、これはマスコミが世論を動かすようになった一つのターニングポイントなのかもしれません。
この残虐な「狩り」のシーンがTV中継で全米に流されたのです。
このことで、黒人ばかりでなく白人たちの意識も変わっていく。
こんなことは間違っている。
愚かしいことだ・・・と。
そしてその後また行われたデモ行進には、白人たちも混じっていました。



このように黒人たちを率い、新しい時代を作ったキング牧師の演説が、
実に力強くて胸に心地良く響きます。
「言葉の力」を感じます。
こういう多くの人々の苦難と努力の果てにオバマ大統領はいる。
キング牧師の「半生」ではなくて、
「血の日曜日」に焦点を絞ったところで成功していると思います。



オバマ大統領は奴隷の子孫? 
いや事実はそうではない、などという報道もあったようですが、
問題はそれが事実か否かということではないですよね。
米黒人の苦難の歴史を知っていれば、そんな発言が出るはずもない。
こんな事を言う人が政治家をしているのが間違いです。



グローリー/明日への行進 [DVD]
デヴィッド・オイェロウォ,トム・ウィルキンソン,キューバ・グッディング・Jr.,ティム・ロス
ギャガ


「グローリー 明日への行進」
2014年/イギリス・アメリカ/128分
監督:エバ・デュバーネイ
出演:デビッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン、キューバ・グッディング・Jr、アレッサンドロ・ニボラ、カルメン・イジョゴ、ティム・ロス

歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★☆