映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

カポーティ

2016年03月13日 | 映画(か行)
すごく嫌なヤツなんだけど・・・



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故フィリップ・シーモア・ホフマンのアカデミー賞主演男優賞受賞作。
1959年11月15日、カンザス州ホルカムで農家の一家四人惨殺事件が起こります。
「ティファニーで朝食を」で名声を高めた
作家トルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、
この事件に興味を覚え、現地へ飛び、取材を始めます。


この男、カポーティは、少し妙な話し方をし、
聞かれもしないのに「これは高級なマフラーだ」などと自慢をする。
自己顕示欲たっぷりで、第一印象としてはあまりよろしくない・・・。
けれど次第に、自分の不幸な生い立ちやこの話し声を
非常にコンプレックスに感じ、
「小説」という彼の唯一の武器で、社会に認められ、受け入れられようと
必死であるという姿が見えてきます。
そんな彼が、この事件の容疑者ペリー・スミス(クリフトン・コリンズ・Jr)と面会した時、
不思議に心惹かれてしまうのです。
彼もまた社会に受け入れられないがために、深い孤独に陥っている。



カポーティは、この事件を「冷血」という小説にまとめることを決意。
ペリーの信頼を得るためにせっせと面会に通い、
腕の良い弁護士を紹介したりもします。
でも、本当はあくまでも自分の小説のため。
小説の題名「冷血」は、ペリーに悪印象をあたえること恐れ、
ひたすら「まだ題名は決めていない」と押し通したりするのです。
しかも、ペリーが生きているうちはこの小説を発表できないので、
死刑執行の日を待っていたりする。
この時は、ペリーに「良い弁護士を」と頼まれても知らないふり・・・。
実にイヤなやつです。
だけれども、カポーティはペリーに不思議なシンパシィを感じ、
また自分の身勝手な行動を自分自身責めてもいる・・・
そういうところは映画上で表立って語られたりはしないのですが、
“伝わる”のです。
これぞ映画力ですね。
上質な作品。

カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]
ジェラルド・クラーク
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


「カポーティ」

2005/アメリカ/114分
監督:ベネット・ミラー
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、クリフトン・コリンズ・Jr、キャサリン・キーナー、ブルース・グリーンウッド、クリス・クーパー

心情への肉薄度:★★★★★
満足度★★★★☆