映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

女が眠る時

2016年03月02日 | 西島秀俊
無垢な少女が「女」に変わるとき



* * * * * * * * * *

待ってました、西島秀俊さん出演作!



多少地味なんだけどね・・・
 でも、こういうのが本来の、と言うか西島秀俊さんらしい系譜の作品だよね。
そういうこと。


西島秀俊さん演じる清水健二は、作家。
といっても、処女作がメジャーな賞を受賞して、名前は売れたけれども、
 2作目は売れず、3作目は書けていないというトホホな状況。
 もう小説は半ば諦めて、就職が決まったところなんだね。
そんな彼が、一週間の休暇で、妻とともにリゾートホテルを訪れる。
 妻・綾(小山田サユリ)は、編集者で、
 それだからこそ、作家の夫には価値を感じるけど、書けない夫には失望している・・・
・・・と、清水は思っているわけだ。
だね。・・・でも実際彼女も、そのように思っている感じ。
彼女は仕事がらみでここへ来ていて、日中は担当作家のところに出かけるので、
 清水は昼間は一人なんだね。

その清水が、プールサイドで気になる二人連れを見かける。
 初老の男・佐原(ビートたけし)と、若く美しい美樹(忽那汐里)。
夫婦にも親子にも見えない、謎の二人。
その夜、眠れない清水はプールサイドを散歩するうちに、
 この二人の部屋を見かけ、つい覗いてしまうんだね。



えーと、前にもあったよねえ、西島さんが壁の穴から隣を覗いてしまう、というのが。
それは「真木栗ノ穴」だね。
 そういえばそこでも西島さんは小説家だ。
人の生活を盗み見る・・・というのは、
 自分だけでは想像もつかない人の営みがみえたりして、
 行き詰った作家には必然的行為なのかもしれない。
で、結局この怪しい二人はどんな破廉恥な行為を繰り広げていたのかというと・・・
女はただ寝ているだけ。
男はその様子をじ~っと見ていて、撮影している。ただそれだけなんだ。



なーんだ、と思う。
 だけどね、これが毎日毎日で、映像は上書きしているんだって・・・。
 でも、気に入ったものだけはちゃんととってある。
 まだ「少女」というような年代の頃から今のものまで、ずら~っと記録があるんだよ。
 皆ほとんど変わらないような寝姿。
でも、微妙に成長しているのは見て取れるよね。
 無垢で無防備に眠る少女・・・
 そしてそれが今「女」に変わろうとしている。
そこに性的行為は全くないのだけれど・・・何やら隠微だよねエ。
 で、清水はその隠微さにハマり込んでしまうわけだ。
 彼らの部屋に忍びこんだりもしちゃう。
そこに美樹が帰って来ちゃったりするから、焦るよねえ・・・。



それにしてもね、そんなまだ子どもと言うべきような時から
 一緒に二人だけでいるっていうのはどういうことなのよ・・・? 
佐原が彼女を勝手に親元から連れだしてしまったらしいのだけどね、
 そういう謎は謎のママ・・・
男は女がその「無垢」を今しも脱ぎ捨てようとするのを予感し、
 そして恐怖しているんだよ・・・。
ふしぎな物語。時にはこういうのもいい。
それ、いつもじゃ嫌だってことだね・・・。


でもプールで泳ぐ西島秀俊さんのシーンがあった!!
やったー!! あの肉体美。
 監督のサービスだね。
それからいつも鉛筆くわえてるね。
MOZUでは常にタバコだったけどね。
 鉛筆のほうがいいよね。
 そういえば、チュッパチャプスというのもあったな。



「女が眠る時」
2016年/日本/103分
監督:ウェイン・ワン
原作:ハビエル・マリアス
出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ、リリー・フランキー

隠微さ★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★★☆
満足度★★★☆☆