ヘイサラバサラって???
* * * * * * * * * *
昔はよかったと言ったところで、時間は前に進んでいくばかり。
過去を振り返っても仕方がない。
本作のタイトル通り、明日のことはわからないのである…。
大人気シリーズが誕生して二十年。
髪結いの伊三次と、その恋女房で深川芸者のお文。
仲の良い夫婦をめぐる人びとの交情が、時空をこえて胸を震わせてくれます。
* * * * * * * * * *
表題、「明日のことは知らず」では伊与太と茜、それぞれのことが書かれています。
絵師の修行に出ている伊与太は、先に一度
他の弟子たちと上手く行かずに師匠のもとを飛び出したのですが、
無事戻って修行を続けています。
それにしても、まだまだ序の口。
思い通りにならない事ばかり。
一方茜は松前藩の屋敷で奥女中を始めました。
実際はそこの若殿である良昌のお相手役。
良昌は病弱のため、本来なら藩主の後を継ぐべきところが、
それが難しいとされています。
であれば誰を立てるのか。
松前藩では跡目相続に様々な人々の思惑がからみ、
なんとも嫌な雰囲気が立ち込めているのです。
茜は何故か良昌にすっかり気に入られてしまったことから、
周囲がまたいらぬ動きを見せ始める。
心休まらず、不安を抱えた毎日。
茜と伊与太は、それぞれが壁に突き当たった時、
それぞれお互いをを思い浮かべるのです。
なにも知らず無邪気に喧嘩したり笑ったりしていたあの日・・・。
その思い出で、ほんのいっときでも心に火を灯して、
また明日に立ち向かってほしい。
そう願わずにいられません。
「やぶ柑子」は、当時ならではの切ないストーリー。
藩が取り潰しとなったために路頭に迷った武士たちの話が描かれます。
なんとも理不尽な運命ながら、どうすることもできない。
新たな仕官の口もそうそうあるわけではありません。
明日のお米にも困るのに、武士としての対面は保たなければならない。
それでもなんとか細々と暮らしていたある浪人は、
しかし、妻がついに家を出て行ってしまったと思った時に・・・。
文庫のあとがきによると、
本章は昭和12年の映画「人情紙風船」という作品を踏襲しているそうです。
ただし、ラストは宇江佐真理さんらしく、
暖かな思いに包まれるように変わっています。
そしてラストの「ヘイサラバサラ」。
変な題名なんですが、伊三次が珍しく事件ではなくて
「ヘイサラバサラ」という名前の奇妙なモノの正体を突き止めてほしいと頼まれるのです。
どうやら何かの薬として使われるものらしいのですが・・・。
まあ正体は読んでのお楽しみ。
こういうストーリーもちょっと楽しい。
「明日のことは知らず 髪結い伊三次捕物余話」 宇江佐真理 文春文庫
満足度★★★★☆
![]() | 明日のことは知らず 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫) |
宇江佐 真理 | |
文藝春秋 |
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昔はよかったと言ったところで、時間は前に進んでいくばかり。
過去を振り返っても仕方がない。
本作のタイトル通り、明日のことはわからないのである…。
大人気シリーズが誕生して二十年。
髪結いの伊三次と、その恋女房で深川芸者のお文。
仲の良い夫婦をめぐる人びとの交情が、時空をこえて胸を震わせてくれます。
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表題、「明日のことは知らず」では伊与太と茜、それぞれのことが書かれています。
絵師の修行に出ている伊与太は、先に一度
他の弟子たちと上手く行かずに師匠のもとを飛び出したのですが、
無事戻って修行を続けています。
それにしても、まだまだ序の口。
思い通りにならない事ばかり。
一方茜は松前藩の屋敷で奥女中を始めました。
実際はそこの若殿である良昌のお相手役。
良昌は病弱のため、本来なら藩主の後を継ぐべきところが、
それが難しいとされています。
であれば誰を立てるのか。
松前藩では跡目相続に様々な人々の思惑がからみ、
なんとも嫌な雰囲気が立ち込めているのです。
茜は何故か良昌にすっかり気に入られてしまったことから、
周囲がまたいらぬ動きを見せ始める。
心休まらず、不安を抱えた毎日。
茜と伊与太は、それぞれが壁に突き当たった時、
それぞれお互いをを思い浮かべるのです。
なにも知らず無邪気に喧嘩したり笑ったりしていたあの日・・・。
その思い出で、ほんのいっときでも心に火を灯して、
また明日に立ち向かってほしい。
そう願わずにいられません。
「やぶ柑子」は、当時ならではの切ないストーリー。
藩が取り潰しとなったために路頭に迷った武士たちの話が描かれます。
なんとも理不尽な運命ながら、どうすることもできない。
新たな仕官の口もそうそうあるわけではありません。
明日のお米にも困るのに、武士としての対面は保たなければならない。
それでもなんとか細々と暮らしていたある浪人は、
しかし、妻がついに家を出て行ってしまったと思った時に・・・。
文庫のあとがきによると、
本章は昭和12年の映画「人情紙風船」という作品を踏襲しているそうです。
ただし、ラストは宇江佐真理さんらしく、
暖かな思いに包まれるように変わっています。
そしてラストの「ヘイサラバサラ」。
変な題名なんですが、伊三次が珍しく事件ではなくて
「ヘイサラバサラ」という名前の奇妙なモノの正体を突き止めてほしいと頼まれるのです。
どうやら何かの薬として使われるものらしいのですが・・・。
まあ正体は読んでのお楽しみ。
こういうストーリーもちょっと楽しい。
「明日のことは知らず 髪結い伊三次捕物余話」 宇江佐真理 文春文庫
満足度★★★★☆